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蜂の旅人のENDOのレビュー・感想・評価

蜂の旅人(1986年製作の映画)
4.0
初老の男が、家族や職を捨て、祖父や父がやっていた養蜂家になる。逃避がそこには含まれる。メランコリー。

そこに自由に生きようとする性的にも奔放な少女があらわれる。しかし彼女も逃避家なのだ。

2人はいつしかお互いを求め合うようになる。

手の演出。反乱軍時代のコミュニケーションとしてモールス信号のようにテーブルを叩く。マストロヤンニの手を血が出るほどに噛む女。そこに長回しで徐々に寄っていくカメラ。間際の手の痙攣とも思える動き。

主人公はイタリアを代表する俳優マルチェロ・マストロヤンニ。
アントニオーニの『夜』はテオに影響を与えた一本で、彼はそれに主演していたからだ。企画のきっかけはスウェーデンの小説家ラルス・グスタソンの『養蜂家の死』。

ギリシャの政治は常に、イギリスやアメリカの影響を受け、混乱を招き、国民を抑圧してきたが、独裁制があったときは、世界を変えられる希望があったらしいが、政府の崩壊とともに、希望も霧散してしまったという矛盾が映画に満ち溢れている。
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