疲れ切った老人は今までの生活を捨てた。
旅の養蜂業を始めるも彼の行く先々に自由や気ままさなどはなかった。
目の前に現れた前途ある少女はアメリカの流行り歌に身を任せて、ここではないどこかを夢見、ヒッチハイクをしながら男を股にかけ旅を続ける。
貞操観念も緩く、情緒も不安定なその様は自立した女性を謳う流行歌の歌詞とはおおよそかけ離れたものだった。
そんな彼女の"青春"を眺めながら老人は何を思ったのだろうか。
自分が青春に参加するには老い過ぎていること。若く愚かしいことへの嫌悪と羨望。女の行く末への憂い。世界に対する絶望。
老人の最期のモールス信号は虚しく黒い土を打つ。