けーはち

潜入者のけーはちのレビュー・感想・評価

潜入者(2015年製作の映画)
3.7
80年代を舞台にした実話麻薬捜査サスペンスモノ。最近映画化した運び屋『バリー・シール』のことにも劇中で少しふれられている。犯罪組織への潜入捜査のヤバさは、当然「バレたら死ぬ!」「仲間には助けてもらえない!」ってのと、潜り込んでいるうち「知らず知らずミイラ取りがミイラに染まりゆく」ヤバさがあるね。

本作では、主人公の捜査官が「組織主要人物と親交を交わした上で盛大な結婚式を開き、関係者一堂に会したところで一網打尽にする」という大胆な作戦を指揮、素性を勘づかれないよう仕事をこなしつつ接近距離で盗聴盗撮を続けるというヒヤヒヤした綱渡りの捜査と、濃密な人間関係を築く過程について本当に丁寧に描き、またどんなに仲良くなって気を許したとしても心根は極悪非道の行為を辞さない奴らだという一線が常に見えるのがヤベェ……派手さはないが、潜入の緊張感を常に伴う展開と、結婚式をクライマックスに持ってきてカタルシスを演出する構成は巧みな良作。

ちなみに組織のイニシエーションとして目隠しをされ怪しげな占い師に面談させられるくだりがあるんだが、占い師が主人公のことを「善人だ」とみなして合格を下すのは、もし、その判断が妥当だとして「麻薬組織に深く関わりたいと言って門を叩いてきた人間が善人でいいのか?」とちょっと疑問に思ったけど……とは言え、仮に彼が捜査官でなく本物の善人が自覚して麻薬売買という悪を成しにきたんであれば、「本物の覚悟がある」ってことだろうな。