安堵霊タラコフスキー

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

3.9
ソフィア・コッポラが白い肌の異常な夜をリメイクしたと聞いたとき、カンヌで好評との報を目にしても疑心暗鬼だったけれども、なるほどドン・シーゲル版とは趣を異にした良作になっていた。

ドン・シーゲル版はイーストウッド演じる北軍兵士を主人公として描いていた為に彼の悲運と女の怖さを最後に感じる作りとなっていたけど、このソフィア・コッポラ版は逆に女性らの側に立った演出によって彼女らの悲運と強かさが強調されたような印象を受け、同じ作品でも監督や視点の違いでこうも変わるかと唸った。

映像も陽光や蝋燭の光が神秘的なシーンが数多くあったのは良かったけれども、なまじ良かっただけに分単位のカットが数えるほどしか無かったのは残念で、タルコフスキーやソクーロフの長回しが好きな身としてはもっと映像をじっくり見たかったからカット数はもう少し抑えてほしかった。

とはいえ内容がわかっているのに印象が変わったおかげで興味深く見続けられた点には満足でき、このリメイクの甲斐しか感じられなかった作品を手がけたソフィア・コッポラが女性として久々のカンヌ監督賞を受賞したのも納得だ。