きぬきぬ

The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめのきぬきぬのレビュー・感想・評価

3.5
南北戦争中、南部の森奥深くにある女子学園に取り残された女性(というには二人を除いてまだ少女ばかり)たちが、北軍の負傷兵を良心的に助けてしまう。手負いの獣(敵兵)は紳士的な振る舞いで安全に見えた為、女性たちは好奇心と欲望で近づいてしまう。
それを利用しようとし、相手が女性であることにおそらく優越さを抱いている男の内面も見える。その為に‘事故’が起こるわけなのだが、良心と好奇心で近づいていた女性たちが、獣は獣(敵は敵)と認識したときに敵を排除しようとするのは当然で、相手が女だからと油断している男の愚かしさもあるわけだ。
自身に課せられた責任と役割がある為抑制に抑制された女性としての性、それが南北戦争の最中の閉ざされた館に、ハンサムなコリン・ファレルの闖入者により女性たちに動揺を与える。彼が暴力をもたらしたことによる不審と恐怖。彼女たちは保身で良心的に敵を排除しただけという、
男を迎え入れたときと、排除するときに着飾る儀式的な、様式的な特別さ。これは怖かった。

この作品は美しい。極力自然光で表現したであろう森とその中の学園(館)の陽光が移り変わり、蝋燭の火が揺らめくフィリップ・ル・スールの撮影。控えめで繊細なPhoenixの音楽。特別なときの女性たちの衣裳。外の世界も戦争で危険に満ちているが、館の中も穏やかな閉塞の中にある美しい地獄。


ドン・シーゲル監督「白い肌の異常な夜」と同じ原作を使用した、アプローチのまるで違う、リメイクでない別物。
きぬきぬ

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