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The Beguiled/ビガイルド 欲望のめざめのmaverickのレビュー・感想・評価

3.9
アメリカ南北戦争の時代に、南部のある女学園に北軍の負傷兵が担ぎ込まれてくる。女の園に一人の成人男性が来たことによって巻き起こる怖い物語。

この女学園には、校長と教師、学生を合わせて7人の女性が暮らしている。一番年齢が上の校長がニコール・キッドマン。教師をキルスティン・ダンスト。女子学生の一人をエル・ファニングが演じる。こんな麗しい女学園に滞在することになったら、そりゃ誰かに恋しちゃうでしょう。ちょっと設定が違うが、これを『花より団子』に置き換えたら女性にも分かってもらえるはず。F4みんな魅力だよね?そんな感じ。まぁ誰かに恋するのは分かるのだが、この北軍兵士の男は3人に言い寄ってしまう。そして自らトラブルを起こしてしまうわけだ。プレイボーイが複数の女性に手を出してしまうような話なのだが、そこに人間の本能を感じさせる。深いなと思うと共に、人間の本質が怖いと感じる作品性である。

女学園という閉鎖された環境に置かれ、女性たちは本能で男に惹かれてしまう。男たちが戦争に駆り出され、女性は寂しい暮らしを余儀なくされているというのもあろう。カトリック系の女学園で淑女たる生活を送り、目の前にいるのは敵である北軍の兵士。心を許してはならないと頭では分かっていても、心は揺れ動いてしまう。男も男で、過酷な戦地で身も心もボロボロになり、そんな中でたどり着いたオアシスのような場所。そこには美しく若々しい女性達で溢れていた。女性達はみな自分に興味を持ってくれていて、それが嬉しい。女性達もそれぞれに、男が自分に心を許してくれることが嬉しい。少し道を踏み外してしまうことにも高揚感がある。こうして見れば本作の異常な関係性も理解は出来る。

こうなる関係性は分かりながらも、実際にそれをやってしまうとトラブルが巻き起こるのは客観的に見ればよく分かる。本作もその流れに。後半はどんどん怖くなる。前半で麗しい女の園を描いているが、後半は女性のぞっとする怖さで満ちている。ダニエル・デイ=ルイス主演の『ファントム・スレッド』を思い出した・・。キノコ怖い。

コリン・ファレルのクズ男っぷりも良かったし、女性3人は美しく、妖艶な魅力に満ちた存在感が素晴らしかった。そして何より、このドロドロ劇をアートに表現したソフィア・コッポラの芸術性が光る。絵画的な美しさと、そこに人間の本質を落とし込んだ表現方法に惚れ惚れしてしまった。ちょっと胸糞なところも実に人間味がある。ソフィア・コッポラってアート的な作風で知られるけど、さすが世界レベルだなと感じる才覚の持ち主。親の七光りなど、もう感じさせないね。
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