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ロスト・バケーションのしゃにむのレビュー・感想・評価

ロスト・バケーション(2016年製作の映画)
3.9
「癪に触るわ。シャークだけに…ギャハハ」

家族にピザデブ呼ばわりされてジョギングを始めたら膝が爆発したので初投稿です

↓あらすじ
バカンスに来た女性がサーフィンを楽しんでいると人食いサメに遭遇し怪我を負いながら岩場に泳いで難を逃れる。しかしサメはしつこく岩場の周りを泳ぎ逃げられない。通信機器は浜辺に置き去り。滅多に人が来ない絶望的な状況から女性は脱出出来るのか!?

・感想
サメ博士では無いので確信をもって言い切れないが珍しいタイプのサメ映画である。あの手この手アレンジを加えながら(サメとトルネードの組み合わせを考える人類が居たことに身が震える)我々の常識を打ち破り、ある種の勇気と感動を与えてくれるサメ映画の趣旨は単純明快で、サメに食われる事にある(アウトレイジはサメ映画である)これはサメ映画の伝統である。今作はサメ映画の枠組にありながら「どのように食われるか」という勇敢なサメ映画クリエーターが一番頭を悩ませるであろう課題は放置状態。今作ではサメはあくまで脱出を妨げる障害言ってしまえば小道具に過ぎない。今作のサメは脇役としては実に有能で前に出過ぎることもなく程よく立ち回り脱出不可能と評する他ない状況作りに貢献している。助かりそうで助からない(イケそうでイケない苦しみを味わえ‼︎) 全体的に地味な気もするけど個人的には傑作かと思う。

・女子高生のお尻
死神がぐるぐると周りを旋回する女性の安全地帯は寝返りを打ったらあっという間にサメの餌食になる程に狭い岩場だけ。サメはハイエナのように女性を付けねらっている。こいつが実にしつこい。たいていの映画のモンスターは獲物に期待が持てないと早々に諦めて次のターゲットに切り替えるものだが今作のサメはまるでストーカーである。獲物が餓死するまで待ちかねない程の執着である。この嫌な感じは凄く共感した。寡黙で硬派(内実はコミュ障)で通っていた高校時代、放課にトイレに行き席に戻ると級友の女子がぼくの机に無許可で腰を下ろしていたことがある。面と向かってどいてくれと言える人種ではなかったために鐘が鳴るまで廊下で待っていた。これほど嫌な思いはない。なかなかどいてくれないし、廊下で手持ち無沙汰にしているとぼっちなのかと思われやしないか、内心ヒヤヒヤしっぱなしであった。無事席に戻ると彼女のぬくもりを求めて頬ずりをした級友がいたことをこの場を借りて世間に告白しておく(この上ない柔らかい温もりであった)

・イケそうでイケない
岩場と浜辺の距離はこれまた絶妙。全速力で泳げばたどり着けるだろう。しかしサメに襲われて足を負傷しているので試してみれば確実に追いつかれて餌食になるだけ。希望がありそうに見えて実は希望がない悪趣味な距離設定だと思う。イケそうでイケない、希望を持たせておいて結局希望を回収する嫌らしい展開が多々ある。サーファーパリピ2人組が呑気に進んで死にに来たり、寝ぼけた酔っ払いに助けを呼んだら泥棒だったり、通りかかった船に照明弾を打ったら湿気ってて役に立たなかったり、とことん運が無い。設定が単純なだけに展開の起伏が薄いがところどころに希望と絶望がセットで設置してあるので中だるみなく視聴する事が出来ると思う。
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