カフェバグダッド

ソニータのカフェバグダッドのネタバレレビュー・内容・結末

ソニータ(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ラップ歌手を目指すアフガニスタン難民少女を主人公にしたドキュメンタリーだ。イスラム主義組織タリバンに迫害され、隣国イランに逃れてきた16歳の難民少女ソニータ・アリザデ。ラップを歌うのが大好きで、マイケル・ジャクソンを意識して「ソニータ・ジャクソン」と自称したりもする。母親はアフガンの慣習そのままに、ソニータをアフガニスタンで結婚させ、1000ドル単位の結納金を得ようとする。望まぬ結婚から逃れようとするソニータは、自ら作詞したラップを歌い、音楽に思いを託す。

ソニータの苦悩を撮影するイラン人監督、ロクサレ・ガエム・マガミさんは、同じ女性としてソニータの人生にどこまで関わるべきか、で悩む。これはドキュメンタリー映画やジャーナリズムにとって、とても大きな問題である。

それで思い出したのが、南アフリカの報道写真家ケビン・カーター氏の逸話。カーター氏は1993年にスーダンで、ハゲタカにまさに襲いかかられんとしている少女の写真を撮影し、その写真でピューリッツアー賞を受ける。しかし、「撮影する前になぜ助けなかったのか」という批判にさらされたカーター氏は、その後自から命を絶つ。

この作品を配給したユナイテッド・ピープル代表の関根健次さんによれば、この「ソニータ」をめぐって、ドキュメンタリー映画監督が「対象にどこまで関わるか、かなりの議論になった」という。是非両論があるだろうが、作品の「後味」はよかった。

児童婚、難民問題、ラップミュージック、取材対象との距離の取り方。さまざまな角度で考えさせられる作品だった。