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ソニータの小のレビュー・感想・評価

ソニータ(2015年製作の映画)
4.0
「一線は越えてません」という言葉が2017年、流行ったけれど、ドキュメンタリー映画の監督が言うところの「一線を越える」とは撮影対象にのめり込み、彼らの人生に大きな影響を与えることであるとすれば、必ずしも悪いことのようには思えない。

監督たちは「一線を越える」ことを嫌う。それは多分、映画を見る人を気にするからだろう。一方に偏り過ぎではないかという批判が強まると、自分の意図が伝わりにくくなり、何より映画を見てもらえなくなると怖れるからだろう。

映画で客観はあり得ない、と思う。カメラを固定し撮影しただけの映像でも、どの位置に固定するかは主観に基づく。ドキュメンタリーだって制作者の言いたいことが必ず含まれている。というより、何か言いたいことがあるから、映画を撮るんでしょ?

だから「偏ってますが、何か」で良いんじゃないかな?そうでなくっちゃ映画って、 面白くない。

タリバンに狙われ、アフガニスタンからイランへ逃げてきた少女、ソニータ。ある日、故郷に残った母が、兄の結婚資金のため彼女を嫁がせようと、連れ戻しにやってくる。

児童婚による人身売買が横行する故郷の文化。男性は80歳を越えていてもかまわない。女性は商品として扱われ、母は自分もそうだったと、そのことを強要する。ソニータは、抵抗はするものの、受け入れざるを得ないという雰囲気が漂う。

しかし、彼女には非凡な歌の才能があった。彼女が歌うラップならこの悪しき文化を変えられるかもしれない、そう思わせる魅力があった。

葛藤する監督は決断を迫られる。母に連れ戻されるソニータとアフガニスタンに行き、児童婚の実態を撮影すれば世界に衝撃を与えることができるだろう、ソニータの希望と引き替えに。

イランは女性が1人で歌うことが禁止されているなど、彼女が才能を開花するにはいくつもの困難を乗り越えなくてはならない。それは手助けなしには不可能だし、何より目の前の彼女を助けたい。しかし、映画監督が取材対象の人生にかかわっていいのか、自分はそのことを背負う覚悟があるのか…。

この映画はドキュメンタリーではあるけれど、ソニータの物語であり、監督の物語である。そして監督はやはり女性。男にこの物語は作れなかっただろうという気がする。

●物語(50%×4.0):2.00
・ドキュメンタリーなのにドラマチック。引き込まれる。

●演技、演出(30%×3.5):1.05
・イランとか、アフガニスタンの映像は貴重。特にアフガニスタンのホテルは凄い。やや演出強めな感じもする。

●画、音、音楽(20%×4.5):0.90
・ソニータの歌が良い。
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