YYamada

最後の追跡のYYamadaのレビュー・感想・評価

最後の追跡(2016年製作の映画)
4.3
【NETFLIXオリジナル作品選】
◆監督:
 デヴィッド・マッケンジー
◆ジャンル:
 人間ドラマ、クライム・サスペンス
◆NETFLIX配信月: 2016年8月
◆劇場公開: 有り
 米国: 2016年8月

〈見処〉
①重厚な現代の「西部劇」の大傑作
・『最後の追跡』(原題:「Hell or High Water」=意訳「たとえ火の中・水の中」)は、2016年に製作された犯罪映画
・物語は現代のアメリカ西部テキサス州。中年のハワード兄弟は、州内の田舎町の銀行の支店を強盗、少額の現金の強奪を繰り返す。
・本件の連続銀行強盗事件の捜査は、定年間近のマーカスとインディアンの血を引く
アルベルトによる2人のテキサス・レンジャーが担当。ベテランのマーカスは2人の行動パターンから、次のターゲットを予測し待機を続ける…
・乗馬から大衆車に移動手段が変わっても、乾いた大地における現金強奪のストーリーはまさに現代の西部劇。
・本作と同じく、アメリカ西部を舞台に、定年間近な保安官が犯人を追跡するストーリーは、アカデミー作品賞受賞の『ノーカントリー』(2007)と同じ作品構図であるが、犯罪者の行動原理に共感出来、追跡者となるテキサスレンジャーの社会的正義が描かれている本作に作品としての重厚さを感じる。(もっとも『ノーカントリー』はホラー要素もあり、ジャンルが異なる。)

②白人貧困層の現実
・強盗兄弟がハンドルを握るロードサイドに見える、貧困層の民家や消費者金融の看板たち。本作では、大都会ではない、辺境の田舎町から、アメリカの現在を見ることが出来る。
・冒頭では、衝動的に銀行強盗を繰り返していると思われたハワード兄弟は、ストーリーが進むにつれ、銀行強盗をせざるを得なかったこと、またその悪行には義勇的な側面もあることが分かってくる。
・抜け出せない負の連鎖の渦中にある、白人貧困層(プアホワイト)がリアルに描かれ、このような人たちが、共和党=トランプ支持をするんだろうなと思いながらの鑑賞だった。

③NETFLIX 初のアカデミー候補作
・本作は第89回アカデミー賞にて、作品賞
、脚本賞、助演男優賞(ジェフ・ブリッジス
)、編集賞の四部門にノミネート。結局は、無冠となったが、NETFLIX作品にて、初めて作品賞候補となる。
・また、脚本賞にノミネートされたテイラー・シェリダンは、『ボーダーライン』や『ウインドリバー』にて、アメリカ西部地区における貧困層の厳しい現実を描く、気鋭の脚本家(兼監督)。近い将来のアカデミー受賞を期待したい。

④結び…本作の見処は?
○: 名作を連発する、テイラー・シェリダン脚本により、冒頭からラストまで、無駄なシーンがない重厚なストーリー。
○: アメリカ西部の乾いた元風景と寂れた街並みの影像美。
○: 強盗を犯す兄弟と2人の保安官に其々コンビとしての絆がある。二組のバディムービーとして鑑賞したい。

・本作はFilmarks鑑賞レビュー数が非常に少ない作品ながら「掘り出し物の佳作」。
・NETFLIXオリジナル作品のなかでトップレベルの完成度の作品てあり、NETFLIX未ユーザーを理由に未鑑賞であって欲しくない、広くオススメしたい傑作。
YYamada

YYamada