「モンタナの目撃者」のラジオ映画評で、本作がテイラー・シェリダン脚本作品だと知り、マイリストから取り出す。アカデミー脚本賞ノミネートだそうだ。
監督や俳優や、あるいは原作・シリーズ作のストーリーで映画を選ぶことはあるが、脚本で見るのはまれ。「ボーダーライン」「ボーダーライン・ソルジャーズ・デイ」「ウインド・リバー」に惹かれる気持ちに、「現代西部劇」という映画評の言葉が形を与えてくれた。本作は西部劇そのもの。
「3回イラクに行ったが何の補償もない」と外壁に落書きされた、テキサス辺境の銀行。そこに押し入る兄弟は、遺産の牧場を守るために債権者から奪って洗った金で返済する。銀行への復讐。「転がり始めたら止める手立てはない」有様になっている。追うテキサスレンジャーは定年直前で息が上がっている。
疲労感が全編を覆う。何度も現れる道路沿いの看板は「借金でお困りではないですか」と呼びかける。「まるで病気のように貧乏」な経済格差が街にへばり付いている。
「現代西部劇」には、ジョン・ウェインもクリント・イーストウッドもいない。