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最後の追跡のさんぴんのレビュー・感想・評価

最後の追跡(2016年製作の映画)
4.5
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#映画備忘録 #20181226
#最後の追跡
監督/デヴィッド・マッケンジー
脚本/テイラー・シェリダン
#HellorHighWater
2016/アメリカ/102分
#Netflix #1日1本オススメ映画
#映画部 #映画好きな人と繋がりたい
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テイラー・シェリダン脚本の
フロンティア三部作の二作目。
一作目は「ボーダーライン」(2015)
二作目が「最後の追跡」(2016)
三作目は「ウインド・リバー」(2018)
前置きとして、万人受けするタイプの
映画ではないこと、静かな映画で
あること、三部作はシリーズものでは
ないことを踏まえてレビュー書きます。
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舞台はテキサス。
貧困から銀行強盗をする兄弟と
それを追うレンジャー組のお話。
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フロンティア三部作の共通項として
1.物語が二軸で進行し、交錯する。
2.緊張と緩和の連続。
3.アメリカ社会問題への切り込み。
上記3点が挙げられると思います。
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1.二軸構成について。
「ボーダーライン」であれば
ケイトが軸のお話と、アレハンドロが
軸のお話が交錯するラスト。
続編でも二軸のお話がありました。
「ウインド・リバー」であれば
追う側と被害者のお話が。
本作でも、兄弟とレンジャー組のお話が。
強い特徴として、それぞれのお話に
しっかりとしたベースがあること。
だからこそ、見終わった後に
どっしりとした気持ちになるのだと思う。
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2.緊張と緩和について。
テイラー・シェリダン作品を
一作でも見ればわかると思いますが
劇映画のような盛り上がりは無く
会話劇での緊張感。敵と対峙しての
緊張感、物語を把握しきれない緊張感。
挙げるとキリがないほど、ピリピリした
ストーリー展開になっています。
そのどっしりさが、映画を観た実感、
満足感に繋がるんだと思います。
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3.アメリカ社会問題への切り込みについて。
「ボーダーライン」なら
メキシコ麻薬問題。
「ウインド・リバー」なら
先住民保留地における未解決犯罪問題。
本作だと、大雑把に貧困問題。
銀行が借り手に不利な条件で
お金を貸し、担保を差し押さえ財産を
奪っていく。奪われた側は手も足も出ない。
原題「Hell or HighWater」には、
単に「地獄と絶頂期」という意味だけでなく
買主に圧倒的不利な条件で売るという
意味もあるみたいです。(英語苦手)
こうした社会問題を、間接的な描写
で強調するのがシェリダン流。
本作だと、街中にある銀行の
借金やローン返済にまつわる看板が
意識的に映されていたりします。
こうした看板の描写と、レンジャーの
アルベルトのセリフ。
「先祖代々奪い合った土地を、最後は
やつら(銀行)が奪っていく」
この2点に集約されています。
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上記を踏まえて、三部作の中だと
一番見やすい映画なのは確か。
カントリーミュージックがかかり、
兄弟とレンジャー組はそれぞれに
軽口を言い合うバディー映画。
この軽口(ワイズクラック)の言い合いも
またいいんです。それぞれの仲の良さ、
絆の深さを知ることで、最後の
あの場面のショッキングさを倍増させる。
しかもそこには悲観的なBGMも
なんら前フリも無く突然に。
そして一度始まった暴力の連鎖は
一生忘れることの無い記憶として残る。
ここも三部作の共通項だと思います。
本当に救いの無いストーリーと
テキサスの綺麗な景色の対比だったり
見終えたあとの満足感はすごいです。
このレビュー書くのに、タバコ2本分の
余韻に浸って頭整理してから書くくらい(笑)
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最初の射撃の腕の会話もラストに
活きるようになっている小技も光る
激シブな一本です。オススメです。
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