あらゆる理想や規範が崩れ去る。
愛国青年たちが、希望を膨らませて向かった戦場。絵描き志望の主人公が、徐々に人を殺すための道具になっていく。
戦場にロマンはない。
主人公が心躍らせた過去の文化はなにも語りかけてこない。戦争体験後、いつも頭の中にあるのは死と戦友のことだけだ。
あらゆる地獄を見た後、故郷に帰った主人公を待っていたのは、戦争の現実を無視した戦争の幻想だった。
「人類1000年の文化をもってしても、大戦争を回避することはできなかった。その文化がいまさら私になにを語りかけるというのだろう」
こうした葛藤は、大きな歴史や司令部からすれば、とるに足らない。
最後、主人公が戦死した日に打たれた電報は「西部戦線、異常なし」
戦争は早くとも3週間で終わる。
そうしたら英雄気分で祖国に凱旋だ。
こうして始まった大戦争はあらゆる規範を壊し、ヨーロッパの時代を終わらせることになった。