喜連川風連

西部戦線異状なしの喜連川風連のレビュー・感想・評価

西部戦線異状なし(1979年製作の映画)
3.5
あらゆる理想や規範が崩れ去る。

愛国青年たちが、希望を膨らませて向かった戦場。絵描き志望の主人公が、徐々に人を殺すための道具になっていく。

戦場にロマンはない。

主人公が心躍らせた過去の文化はなにも語りかけてこない。戦争体験後、いつも頭の中にあるのは死と戦友のことだけだ。

あらゆる地獄を見た後、故郷に帰った主人公を待っていたのは、戦争の現実を無視した戦争の幻想だった。

「人類1000年の文化をもってしても、大戦争を回避することはできなかった。その文化がいまさら私になにを語りかけるというのだろう」

こうした葛藤は、大きな歴史や司令部からすれば、とるに足らない。

最後、主人公が戦死した日に打たれた電報は「西部戦線、異常なし」

戦争は早くとも3週間で終わる。
そうしたら英雄気分で祖国に凱旋だ。

こうして始まった大戦争はあらゆる規範を壊し、ヨーロッパの時代を終わらせることになった。
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