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TAP THE LAST SHOWのこのレビュー・感想・評価

TAP THE LAST SHOW(2017年製作の映画)
3.5
友だちのお誘いで急遽行けることになりました。映画本編上映+映画にも出演したタップダンサーたちによるタップダンス、水谷豊監督も含めたトークショーとかなりぜいたくなプレミアイベントでございました。

水谷豊初監督作品であるこの映画、正直に言って「ほかの監督が撮ったらもっとうまく、面白く撮れただろうな」と思いました。話は凡庸、登場人物もまあスポ根系物語の典型、演出もことごとく自分にとってはスベってる、というかそれやる意味あるのかよ…と、終盤までずっと思ってました。なぜ今さら北乃きいなんだよ…とか、これは観終わった後で知ったんですが劇中タップダンスを披露する人たちは(恐らく)ほとんどがプロのタップダンサーの方たちで、なのでタップダンスは当然ながら圧巻なのですが演技がやはり少しうーん…と思ってしまいました。なんか、全体的にすごい不器用な作りだと感じたんですよね。

でも、観て良かったと思えました。この映画、水谷豊演じる主人公渡はかつて天才タップダンサー・演出家と呼ばれていたのですがショー中の事故により足を怪我しいまや酒に溺れる日々。そこに旧知の劇場支配人(岸部一徳)が「もう自分の劇場を閉めるから、渡さんの演出で最高のショーをして終わらせたい」と相談を持ちかけられるところからスタートします。
まあ、その話自体はベタなんですけど、金にもならない(むしろ借金が増えるばかり)・なくたって生きていけるのに入れ込むがあまり命まで落とすような人がいる「エンターテイメント」なんていうどうしようもないものに、これまたどうしようもなく魂を奪われてしまった人たちの物語だったのが、映画終盤のショーが近づくにつれて泣けてきて…。実際渡は足を怪我して杖つかないと歩けない上に酒浸り、劇場支配人も心臓が悪い。タップダンサーの奴らも問題かかえまくりで、どうしたってエンターテイメントなんかに出会わなければもっと普通の生活が送れたはず。その、頭では分かってるけどどうにもエンターテイメントという魔物に囚われてしまった、夢追い人というか夢狂い人たちの話に、泣かされました。劇場支配人の最後の挨拶が特に泣けて、最後のショーを見届けて1人劇場を去る渡がまた…全ての夢狂い人に観て欲しい。
こ