dm10forever

獣道のdm10foreverのレビュー・感想・評価

獣道(2017年製作の映画)
4.0
【ワタシノイバショ】

あれ?想像してたのと違った。
面白い。

鑑賞前は「3.4点」くらいかな~なんて勝手に値踏みしてましたが、いやいやど~して、結構ちゃんとした映画に仕上がってますよ。

まず目を引くのが須賀健太君の成長ですね。あんなに可愛かった子役だったのに、気が付けばタバコは吸うわラブシーンはこなすわ。それにこの映画における「亮太」の独特の擦れた感じを見事に演じていました。さすが子役上がりと言った感じですかね。
さらに良かったのが伊藤沙莉さんですわ。ごめんなさい、今まで正直あまり可愛いと思ったことがなかったのですが、今作で印象がガラッと180度変わりました。

中学校のクラスであまり馴染みがなかったグループの女の子と数年ぶりの同窓会で会った時に「あれ、こんな娘だったっけ?」ってなる人っていません?化粧とかもバリバリで女の子から女に変わっちゃってる子。
それに比べて自分の変化のなさに驚くみたいな・・・。

とにかく伊藤沙莉さんの凄いのは、劇中のその時その時の環境によって「清純な女の子」にもなるし「ヤンキーを地でいくおバカちゃん」にもなるし「本当に堕ちるとこまで堕ちた場末の女」にもなっていた。そしてそのどれもが、その時の境遇の中で一生懸命生きている「愛衣」に繋がるのだ。
幼い頃から宗教ジャンキー(!)の母の元で十分な愛を知らないまま育った愛衣は、自身も宗教団体に預けられ、そこで自分の居場所を見つける。だけど、世の中は彼女から居場所を奪い続ける。そうやって生きてきた彼女は自然と「永遠に安らげる居場所」を求めて彷徨っていたんだね。だからバカなヤンキーと付き合った時は、彼と同じ色に染まるために自分もヤンキーに成りきり、全力でそこを「居場所」としようとしていた。
トラブルに巻き込まれて、とある一家に助けられてそのまま養女のような形で住まわせてもらったときも、結果的に一家に不和をもたらす存在になってしまったが、彼女自身は全力で家族になりたいともがいていた。「器用すぎるが故の不器用な世渡り」だったのかもしれない。

そして都度都度ですれ違う亮太は、その時々で変わっていく愛衣の健気さにどんどん心を惹かれていく。なんかわかるな・・・。決して上から目線で「不幸なこの子を救ってやりたい」とかいうのではなく、純粋に「この子も俺と同じだ」って自分の心に気が付くみたいな。
舞台となった町自体が田舎で、亮太自身も無気力に過ごしていたからこそ、居場所を求めて懸命に生きる愛衣が羨ましく、愛おしく見えたのかもしれない。

表現自体は痛々しくて棘のあるものだったけど、何故かそれをあまり感じさせなかったのは、愛衣に悲壮感がなく、どんな状況でも明るく過ごしていたから。だから観終わった後にも悶々としたものは残らなかった。逆に爽快感すら感じたほどだった。

あとね、脇役も光ってたね。特に吉村界人。前半の「虎の威を借る狐」みたいな雰囲気から、徐々に暴走していく様はよく描けていました。『あ、コイツ「イッた」な』みたいな。
顔というか目がイっちゃってる感じが中々よかったです。
それにアントニーも良かった。単純に冷酷で最強なリーダーというわけではなく、守るべきものを守るっていうのが根底に見えて、結構好きな役でしたね。ハマッてたかも。

冒頭の童貞少年たちとのやりとりの最後で、愛衣が少年たちに「助けて・・・」と呟いて去っていく姿の意味が徐々にわかっていく感じでしたね。
依存する相手が強いとか弱いとかは一切関係なく、ただ「本当の居場所」を探し続けていたんだなと・・・。

で、ふと思ったんですが、「須賀健太君」と「伊藤沙莉さん」ってソックリじゃないです?
最初は気のせいかなって思いながら観ていたんですが、結局最後までその思いは消えませんでした。やっぱり似てるな~と(笑)

そして本当に伊藤沙莉のファンになってしまった自分がそこにいました。
結構好きなタイプの映画です。
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