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獣道のjjのレビュー・感想・評価

獣道(2017年製作の映画)
3.8
「私は孤独なんじゃなくて孤高なの!」

『万引き家族』がドキュメンタリー調の物語だとしたらこちらはメロドラマ的に進む。社会の低下層というか、田舎の人間関係ってわりあいこんなもんじゃないか?と思えてくるような人々に光を当てている。現実に存在する(という)人々をフィクションで観客に知らしめて考えさせるという点では、同情などお断りの、もっと言えばてめえに同情されるまでもなくうちらは生きていて同情されるなんて癪にさわるんだよとでも言いたげな淡々と進んでいくメロドラマを拒否した形のメロドラマの方が誠実であるのかもしれない。『万引き家族』が積極的に受容されているなら『獣道』ももっと知られてもいいはずだ。伊藤沙莉のハスキーな声でツンとした口調がある階層を象徴的に喚起させ、大学で穏やかに友達と話している須賀健太からは微塵も匂ってこない地元の凄まじい日々とのコントラストから「育ちの良い」者たちには感知することのできない彼らの歴史を垣間見ることになる。こうやって人生は続いていく。環境に応じて容貌は変わっていくのだろう。それをどれだけ他人は知りたくても追いかけても辿り着くことはできない。その人と関係しているその瞬間の自分とその人との間の空間以上に自分にとって本物は無いからだ。
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