面白い！
宗教とかヤンキーとかヤクザとかスキューバダイビング。
伊藤沙莉が演じる愛衣の物語を軸に、登場人物それぞれが自分の浅はかさ故に翻弄され道に迷い、それぞれの着地点から新しい人生を歩む話。
まずはやっぱり伊藤沙莉。TBSのドラマ版『この世界の片隅に』で見せていたようなコミカル人情派な演技だけの女優ではなかった。例えるなら安藤サクラのような“容姿を超越した魅力”が憎らしくもありキュートでもある。この先もっともっとスケールの大きな役者になっていくことでしょう。
あとアントニー！ その風貌からくる存在感に負けない演技は映画デビュー作とは思えない。少し前までの邦画ではメインキャストの1人になり得ないキャラクターで、相手役の韓英恵の出自も相まって、この2人の活躍は（劇中のテーマではないけれど）邦画における偏見や狭量さを打破していく礎になるんじゃないだろうか。要は“外国人（に見える人も含む）が出てくるだけでそれを異物として扱う”という単一民族意識を無くして、“日本人”という括りを現代的にアップデートしていくこと。
さらには吉村界人もイイ！ 胸糞悪いけど同情してしまう、信用できなさと心の弱さを漂わせる天性のイイ顔！ 悪人の出る映画には欠かせない素材。『ディストラクション・ベイビーズ』や『雌猫たち』、『ビジランテ』と近年の作品でよく見かけるのも頷ける。
愛衣の物語だけでも充分に面白いんだけど、自分は勝手に油断してたアントニー演じる堅太の物語にグッと来た。湖での出会いのシーンは映画的な映像サプライズのちょっとした面白さが秀逸。
ちなみにエンドロールでは餓鬼レンジャー with 伊藤沙莉の主題歌が流れるので、伊藤沙莉のラップが聴けます。
ウィキペディアのあらすじに結末のネタバレが書いてあるので、読むなら観てからの方がいいです。
