フラワーメイノラカ

ブレードランナー 2049のフラワーメイノラカのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.0
『ブレードランナー』(1982)から35年。
正当の続篇として世界観はそのままに、より痛ましい廃墟としての現実を反映する。
原作のエッセンスを強めた、ポスト・アポカリプス時代を象徴する傑作。

新作待機勢です。
公開当時、謎に逆張りして観なかったのもったいなかったな〜と思うほど癖に刺さりました。

どちらかというと原作ファン寄りな自分でも、あの映像世界は唯一無二で。
それを踏まえて、リドリー・スコットの手からP・K・ディックの元へ循環するようなつくりが素晴らしかった。

聖書の残酷性を深く掘り下げ、グノーシス派に近づくシナリオ。そして、双子に象徴される分裂症めいた世界認識は、やはりディック的としか言いようがない。

作中でアンドロイドに起きる"奇跡"が齎す、新たな混沌。
無為に巻き込まれながら、妄執的に"奇跡"を追い求める本作の主人公K。
デッカードはアンドロイドを愛し、楽園追放の英雄となった。
しかし、Kが愛するJoiは、もはや実体を持たないホログラムだ。
それはまるで、過去の栄光をフラッシュバックして前進することをやめた現代そのもののよう。

それでも、KとJoiが"嘘"で繋がるシーンの、宗教的なまでの尊さは私にとって真実のように感じた。

この肉体性の欠如と旧世代への愛憎を、一手に受け止めたドゥニ・ヴィルヌーヴ。
真に神話的な物語に踏み込んだであろう次作が、今から本当に楽しみ。