しぇんみん

ブレードランナー 2049のしぇんみんのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.7
待望の続編。

前作のテーマを「生」とするなら、本作のテーマは「命」だと思う。

人間の本質とレプリカントたちの夜明け。

「ブレードランナー」としてロサンゼルス警察に所属する新型レプリカント「K」。

彼は、かつて反乱を起こした旧型レプリカントを「解任」する職務に就いている。

家ではウォレス社製AIの恋人ジョイと過ごす日々を送るのみだ。

ある日、彼は捜査中にある農場で旧型レプリカント、サッパー・モートンを「解任」する。

その農場の木の根元に埋まっていた「箱」。

発掘の結果、中には「遺骨」が納められていた。

この事件を発端とし、物語は大きく動き始める...。

2022年のテロによる大停電により、世界は壊滅的な被害を受けた。

しかしそのお蔭で、「旧型」と呼ばれるレプリカントたちは静かに生きのび、ひっそり人間として暮らしている。

人々は合成食料を生きる糧とし、目にする生物は人工動物ばかり。

地球環境と生態系の崩壊後、雨と雪と砂に支配され荒涼とした風景は、フィリップ・K・ディックの原作の描写と重なる。

愚直なまでに従順となり、完全に人間の下僕となった新型レプリカント「ネクサス9」。盲目の創造主ウォレスと彼らの関係は、神と人間の関係を彷彿とさせる。

記憶の中の木彫りの馬。

木の根元に刻まれた「06/10/21」という数字。

無菌状態の部屋に保護され、記憶を創造することを生業とするアナ・ステリン博士。

Kが謎の真相に近づくにつれ、彼は運命のうねりに飲み込まれて行く。

全体的に長尺すぎる感はあるが、丁寧に積み上げられた伏線と情報により、世界が深みを増し広がってゆく様が心地よい。

また、デッカードの登場、レイチェルの名前と声を聞く頃には、感情の波に飲まれること間違いなし。

「お前たちは奇跡を見たことが無い」

冒頭、サッパーの残した言葉は、ラストシーンになって心に刺さる。

ハナマル!

2017/10/29
2017/10/31 一部削除
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