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ブレードランナー 2049のshxtpieのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.0
オリジナル版を絶対視し、伝説化するあまり、あるいはオリジナル版のファンへのいやらしい目配せがすぎるあまり(このあたり『フォースの覚醒』にそっくり)、いやー、これはちょっと……、と序盤は思ってたんだけれど、“K”ことライアン・ゴズリングが焦燥感に駆られ、じりじりと消尽していくそのさまはどうにも人間くさく(レプリなのに)、嫌が応にも引き込まれた。

それにしても、懐旧や伝説化する対象が 1980 年代のフィクションにまで及んでいるというところにアメリカ的な病を感じるというか……(『グレムリン』もリメイクするらしいし)。アメリカという国家には過去、歴史がないから、けっきょく、近過去を歴史として自ら対象化して伝説化することで国民国家の物語として供給してきたのであって、『ブレードランナー 2049 』はまさにその最新形と言える。

『ブレードランナー 2049 』の鍵概念は記憶(メモリー)であり、その喪失や捏造と移植がテーマになっている。それは上に書いたようなアメリカが近過去を物語として国民に供給する、という構図と無関係ではないはず。そして、このテーマはかなり『攻殻機動隊』的で、オリジナル・ブレードランナーとはだいぶ異なっているというか、そこから進んでいるのか退いているのかはよくわからない……。が、クラウドとスマートフォンと SNS に取り囲まれて、ますます記憶を外部の媒体に任せるようになったぼくたちにとって、『ブレードランナー 2049 』(と『攻殻機動隊』)の物語をくだらないものと突き放しては見られないだろう。メモリーとはデータなのか。それともちがうなにかなのか。メモリーは人間のもので、データはレプリのものだ。人間もレプリも塩基記号 ATCG の 4 つで構成されていて、 AI のジョイ(アナ・デ・アルマス)は 0 と 1 の 2 つで構成されている……。

映像やロケハン、大道具小道具は圧倒的だけれど、構図に驚かされることはないし、退屈とも言える。すごい画が出たと思ったらすぐにカット、けっきょく、トレーラーを観たときの興奮を超える瞬間はない。ロジャー・ディーキンスは人物を撮るのがあまりうまくないな、と思った。だってアップばかりで構図がほとんどおなじなんだもん。あとタルコフスキーっぽいのはダサいからやめて。

とにかく、言いたいことが多すぎる。
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