シネマスナイパーF

ブレードランナー 2049のシネマスナイパーFのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
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なぜ今またブレードランナーなのか?という部分において、大いに納得させられる、説得力ある作品でしたね
ただ同時に、僕としては、前作の時代感があまりにも神がかっていた部分があったかなと改めて思って、前作の評価を爆上げする結果にもなりました


レイチェルやダリルハンナから出ている、今じゃ絶対通用しないあのファッションを始め、あまりに圧倒的すぎる独特な世界観を馬鹿正直に復活させると観れたもんじゃないことはハッキリしているので、今回の全体のバランスは成功しているでしょう
続編だからある程度は踏襲しないといけないので、真新しさが薄いのは仕方がないことだと思います
ウォレス社のシンプルイズベスト感は如何にも今時って感じがしますね、アップル〜


今回の物語は、地獄めぐり
ロボコップよろしく事実を知っては悶えていく
前作結末による最大のミステリーとなってしまった、主人公人間なのかレプリカントなのか問題が、最も残酷な運命を孕んでしまった話
前作のロイを膨らまして、デッカード的な主人公補正が足された感じでしたライアン・ゴズリング
オレの嫁ことジョイのキャラクター造形は、テーマに沿った素晴らしいものでした


とにかくとんでもないものを観た、という感想
人間はどこまでいってしまうのか、人間性というアイデンティティの持つ意味とは
とんでもないものを観た、んですけど、煮え切らなさがちょっとそれ以上に強かった

映画として持っているメッセージとかレベルの高さとかは勿論今回の作品の方が圧勝しているんですが、なにかこう、前作の持っていた圧倒的かっちょよさは何処かに行ってしまったような気がものすごくします

ニューヨーク1997とかブレードランナーとか、80年代SFが醸し出すかっちょよさが、この作品を観たことで逆にやっと理解できたような気がしました
特にブレードランナーは、あのパンク感丸出しの土砂降りネオンの中でハードボイルドなノワールをやっているというそれが斬新でメタクソいかしてる

ただこれはもうアプローチの仕方が違うということであって、好みの問題と言ってしまえばそれまでなんですよね
なんてったって映画の撮影の名手で知られるロジャー・ディーキンスが撮影を担当しているだけあって、別ベクトルでの圧倒的映像説得力が生み出されているので
元々の原作も、読んだことないから本当のところはどうなのかは分からないですが、前作のパンク感強めなビジュアルが先行しているイメージではなくて、今回のような高尚なものを孕んだ作品なんだと思うんですよ

でもね、やっぱり長すぎだとは思う
あゝ、荒野の5時間は許せるのにこの作品の160分には物申してしまうのはなぜなんだろう

あとレプリカントたちによる反乱軍らしい連中が一瞬だけ出てきてそのまま投げっぱなしにされて終わるということに非常にモヤモヤを感じる
クライマックスでは、マジで戦うKとラヴの映像の間に、身動き取れなくて溺れそう〜とキョロキョロオドオドしているハリソン・フォードがいちいち挟まれてなんか可笑しかったですよ自分だけかな


とか色々書き連ねてしまいましたが、一見の価値は勿論ある注目の作品であることは間違いありません
音楽の物理的パワーが尋常ではないので必ず劇場で観ましょう