こうん

ブレードランナー 2049のこうんのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.1
誰かに似ている…とずっと思っていたのですけど、本作のパンフ読んでいて気付きました。
ドゥニ・ヴィルヌーヴと室田日出男はクリソツです。
室田日出男がピラニア軍団でなくて大酒呑みでなければヴィルヌーヴになると思います!

…という与太を思いついてテンション上がった「ブレードランナー2049」。
ついこの間「ブレラン」のファイナルカットを観たばかりの初心者なので全然思い入れがない状態でしたが、初日の熱気の中で観るのが正解!と予感したのでまた丸ピカの爆音上映に行ってきました。
(名匠ディーキンスのキャメラワークを彩度が落ちる3Dで観る勇気はないです)

それで興奮冷めやらぬ中、すぐ感想書こうと思っていたのですが…時間が経つにつれ、変わっていく私の心。
いや周りが変わっていくのでしょうか?

観終わった瞬間は拍手したくなるくらいに超興奮状態だったのですが、シャットアウトしていたいろいろな尊敬すべき人の評論等々を読んでいると、どれもこれもナルヘソな側面があって、自分の感想がどんどんブレていく気がして、それでもって今これ書いています。

頑張って僕の中の「2049」に対する七転び八起きする感情を文字起こしすると、


・「ブレラン」の続編として完璧じゃないか!
・なおかつ、21世紀の映画とりわけヴィルヌーヴ×ディーキンスのSF仕事としてもめちゃくちゃクオリティが高い
・しかしそれはどこまでも「ブレラン」の軌道上の映画で、想定内と言えば想定内
・といいつつ“にわかブレランファン”として楽しかったし嬉しかった
・つまりオリジナル・ブレランありきの面白さ、というところにこの興奮は準拠しているのではないか(そういう風に作られているし)?
・それで喜んでいいのか?


…といったところであります。
別に理解してもらわなくともよいけど、こんな気持ちでグラグラしております。

映画を観て映画のことを考える僕のエブリディを点で考えるなら本作は年間ベスト級の映画だし、しかし線で考えると(それはリュミエールやエジソンからつながる線だ)、「うーん、仕方ないけどこんなものだろうな」といったところなんである。

やはり僕のなかではあの映画の存在が大きい。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」。
「ブレラン」も「マッドマックス」も同じ80年代前半に現れその後の映画史をも変えてしまった1本で、「2049」も「デス・ロード」も30年ぶりの新作だ。
(続編か否かの違いはあるけど)
個人的な部分でいうと、2つのカルト映画に対する僕の馴染み具合や認識もほとんど同じだ。ビデオでぼんやり観たことがあるかな~くらいの印象。

結果、「2049」はモヤモヤし、「怒りのデス・ロード」は個人的にも世界的にも映画史を変える1本となった。(今フュリオサの捨て身の頭突きを思い出して涙目だ)

なんだろうな…この“「ブレラン」続編”という世界中のうるさ型を敵に回しかねないリスキーな企画を見事な娯楽映画に仕上げてきたヴィルヌーヴさんは称賛されるべきだと思う。彼以外ではこれ以上の「2049」は望めなかったかもしれない。
(リドリー・スコットよりも良かったかもしれない)

しかしそこに僕は、のびやかな創造性を感じなかった。
自ら限界を設けたような印象があった。

言い換えると、「2046」を観ていた僕はこの映画の作り手たちに気を使われている気がしたのだ。「あなたたちが大好きなブレラン続編を作りました、どうでしょう?」という声が聞こえてならなかった。
それは心地いいのだけど、なんというか、物足りない。
ヴィルヌーヴならではのオリジナリティもあるし、ありとあらゆる要素がアップデートされている。
だけど、足りない。原典に真面目過ぎるのか、カルト映画の続編の宿命か。

僕の観たかったブレラン続編は「2049」で間違いないのだけど、「こんなのブレランじゃない!」と叫びながら度肝を抜かれるような続編を期待していたのも確かなんです。
(予告編でH・フォードが出ている時点でそれは叶わないと思ったけど)

なんでしょうかこの気持ちは。
面白かったし楽しかったし、なんならちょっと泣いたけど(JOIちゃんの最期)…僕の好きな映画は、こんなに窮屈であるべきではない、という思い。

ヴィルヌーヴさんはもっと自由に野蛮に作っても良かったのではないかと思う。
(パンフを読むとリドスコ師を製作上のよりどころにしていた節がある)
(あとみんながみんな褒め合っていてちょっと、キモイ)


…なーんて贅沢なんすかね。
ヴィルヌーヴ映画のファンとして、本作でも“壁”に対する即物的なこだわりが感じられたので良かったです。
あとゴズリングは「ラースとその彼女」みたいだったし、彼は頭蓋の形がいいです。
爆音上映最高でした!

なんやかやでニコニコしながら帰ったら、妻が般若顔で「あたしハリソン・フォード好きなのよ!」とお怒りだったのでもう1回観に行くことになりそうです。
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