サラリーマン岡崎

ブレードランナー 2049のサラリーマン岡崎のレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
5.0
あれから35年後。
エイリアンやパイレーツみたいに定期的に開催される祭り映画ではなく、
前作は35年前に1回だけ上映されたもの。
その頃は鳴かず飛ばずの結果だったけど、
着々とファンを増やし、
この2017年、1作目の舞台の2年前に2作目をつくるという重厚な面持ち。
「映画」という消費型のドラマとは違う後に残る媒体で名作というものができる中でその歴史をも感じさせるところがすごい。

そこに監督して選ばれたのが、
ドゥニ・ヴィルヌーブ。
ブレードランナーのあの少し重苦しく厨二な感じと
ドゥ兄のシュールレアリスム感。
とてもマッチしている。
決して大衆映画をつくる人じゃないけど、
だからこそ大事に作ってくれている。

灼熱の魂からプリズナーズなどに受け継がれているミステリーの謎解きと衝撃、複製された男やボーダーラインで登場人物や観客を突き放すそのドSな血は本作にも流れている。
でも、メッセージでちょっとポジティブさを蘇らせた変化もそこにはあった。

でも、中心としてあるのはやはりシュールレアリスム。
異様な空気感の中で異様な空気を生んだ者やそれに囲まれる者たちの心理の動き。
その異様な空気はテロや誘拐、麻薬カルテルといった大きな問題の中で生まれることもあるが、
日常生活で自分と瓜二つの存在に出会ったりすることでも生まれる(そんなことあまりないけど)。
でも、何かしら違和感を日常で感じた中で必ず生まれてるもの。
社会のどうしょうもないこととか憎悪・嫉妬とかそういう人間が抗うところで生じる。
その異様な光景と苦しみもがく人間の姿はものすごくミステリーに満ち溢れていて
見たくなってしまう。
テクノロジーの進化でそれらが増大してしまうのは確かで、SFはシュールレアリスムの極地に達するかもしれない。

そんな中で出会うべくして出会った、
ブレードランナーとドゥニ・ヴィルヌーブ。
現代、テクノロジーが進化し、AIが発達した中でシュールな状況がたくさん発生する。
劇中でもロサンゼルス2049年のネオンきらめく異様な光景とともに、
進んだ社会の中で生まれたミステリーが進行する。
異様な光景もミステリーの一部。
SFだけど、アクションがあるのは本当に終盤だけ、そこは前作と同様。
その少し重苦しいトーンの近未来をやっぱり「見てみたい」と思うのはそのミステリーにワクワクするからだ!!!

人生はミステリー。
コピライターには程遠い…。