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ブレードランナー 2049のpanpieのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
5.0
リドリー・スコット監督の前作「ブレードランナー 」は1982年の作品だった。
振り返ってみると私は当時まだ学生だった事になり自分の記憶違いだった事にまず驚いた。
公開当時観たと思っていたが私は大人になってから観た事を忘れる程何度も観た為に間違った記憶が植え付けられていたらしい。
まるでレプリカントだな。
そう思ってちょっと笑った。

SF映画と言えば今作の5年前に「スターウォーズ」が公開され子供だった私は今は「4」と名前が付いた最初の映画に夢中になったものだが物心ついた頃からのSF映画のベストは「ブレードランナー 」に取って代わった。
あの荒廃した建物と近代的な建物が入り乱れ最先端の乗り物が空を飛び交う中で自転車で行き交う人々、怪しげな露店、変な日本語の看板、〝強力わかもと〟の日本髪の女性。
どれを取っても今まで目にしたことのない映像は退廃的で美しく強烈なインパクトがあった。
映画の世界観が全体に暗くいつも雨が降っていて人間とは一体何なのかという究極の問題を投げかけていた。
僅か4年しか寿命を持たない完璧なアンドロイドが人間に憧れ人間以上に人間らしかったロイ・バディに強烈に心奪われた。
デッカードが霞んで私の中ではこれはルドガー・ハウアー演じたロイの映画となった。
まだ若かった頃の私の心の奥の琴線に触れた気がした。
漠然としているが心を掴まれたのは間違いない。
今作の予習を兼ねて再鑑賞したが横で一緒に観ていた娘は「意味分かんない」とそっぽを向いた。笑
映画にはその人の観るべきタイミングが必ずある筈だ。
もう少し大人になった娘にもこれに懲りず鑑賞してもらいたいと願った。



それから30年後の2049年のロス。
YouTubeで公開された3部作のうち「2048:ノーウェア・トゥ・ラン」で登場したネクサス8型のサッパーは人里離れた郊外で未来のタンパク源である芋虫を飼育しひっそりと暮らしていた。
そこへLAPD所属のブレードランナー Kがサッパーの家へ侵入する。
仕事を終えたサッパーが家に入るとKを見て彼がブレードランナーである事に瞬時に気付き激しく戦った後射殺される。


いきなりレプリカントとの戦いのシーンで始まる。
サッパーとKの壁をぶち抜き激しく戦う様は前作のデッカードとロイの戦いを彷彿とさせる。
そんな場面が随所にありヴィルヌーヴ監督が前作を踏襲しつつ作り上げた新ブレードランナーは明らかに私の中では前作を凌駕しつつある。
未だ私の中では拮抗しており明らかに続編としても私の中では大成功でよくある続編ポシャり疑惑を払拭した。笑
雨でびしょ濡れの前作と取って代わったのが砂漠と雪。
Kの記憶があまりにもある〝事実〟に近過ぎ中盤からKの出生の秘密を探るべき旅へと変わる。
そして任務ではなく自らの手で調べ上げその大いなる〝事実〟へと近づいて行く。





↓ここからネタバレあります。↓
↓ご覧になってない方は注意!↓










レイチェルがデッカードとの子供を身籠もるなどレプリカント的には人間ではないから絶対に無理で、あり得ない訳でまるで処女懐妊したマリア、この奇跡の子はキリストを暗示している様だった。

マリエッティの属するネクサス8で構成されたレジスタンスのリーダー、フレイザから聞かされた自分の出生の秘密。
そしてデッカードが守り続けてきた秘密が繋がった時Kは絶望のあまり叫ぶ。
Kの長く悲痛な叫び声は生きていく意味を全て打ち砕き心の拠り所を失ってしまう悲しい叫びだった。
Kもまた過去のレプリカントと同様に心を、感受性を持ってしまった瞬間。

Kが新型レプリカントである事は観て行くうちにわかるけどこれは観る前は絶対に観た人は語ってはいけないと思った。
事実私は観に行くまで前日譚の3部作しか見ないで他の方のレビューは読まず挑んだのでKの衝撃が自分の衝撃となって驚愕した。
K自身も知るのが怖いが自分が奇跡の子なのか知りたい。
前半で謎の骨が発掘されそれを巡って後半ギリギリで登場した恐るべき事実は少しずつ確実にKに向かう。
被爆した木で作られた木馬を隠した記憶を元に探してみると記憶通りそこから発見されるのも衝撃だった。
自分は奇跡の子かもしれない。
Kがそんな風に思っても無理もない。

自分の記憶が植えつけられたもの=レプリカントを意味する。
木馬を隠した記憶、あれはアナの記憶だった。
後で分かったのだけどアナもKに自分の記憶が移植されたのだと分かり私の影武者だったのだなという同情からなのか涙を流すシーンはどちらの気持ちも分かり熱いものが込み上げた。

でも絶望の底から新たな使命に気付き自分が進むべき方向を見つけKがデッカードを助けるラストは胸が熱くなり泣けてくる。
もう十分過ぎるほど人間だよ、君は。
デッカードを殺せと言われてもKの導き出した答えに胸が締め付けられた。
また雪が降りだす。
ラヴとの格闘の末に瀕死の怪我を負ったKが静かに横たわる。
切なすぎる。(;_;)


ハリソン・フォード現在75歳!
確かにおじいちゃんになっていましたけどまだまだアクション行けてましたね!
物語に重要な役割を果たす逃亡後30年人目を避けて砂漠の地で一人生きてきた感漂っていて今作に深みを与えていたと思います。
30年前も後もレプリカントに狙われレプリカントに助けられるなんて。
アナに会いに行ったラストの笑顔が良かった!
涙がどーっと溢れてきちゃいました。

K役のゴズリング良かったですね〜!
カッコよくて痺れちゃいました。
アクションも出来てセリフがない時の表情で魅せる演技に痺れました!
ラヴとの戦いはどちらも甲乙つけ難い程素晴らしくてあっという間だったので2回目観る時はもっと良く観察したい!(*^^*)
ピアノが出てきたから上手なピアノを弾いて欲しかったなぁ。

Kの愛するジョイ役のアナ・デ・アルマスがとんでもなく可愛らしくセクシーで目を惹いた。
キアヌが痛い目を見る「ノックノック」に出てたので観る気になれなくてスルーしていましたがジョイで彼女の可愛らしさに心奪われたので観てみようという気になってきました。(^^;;
最新のテクノロジーによって作り出されたジョイとKの子供!なんてまた考えすぎてしまいました。(^^;;
ラヴによって破壊されてしまって可愛そうだった。
戦いでボロボロになったのに愛する人を失うなんて酷すぎる。
ゴズリングの涙が一粒溢れる演技にも涙を誘われました。

ジョイと対極にあるラヴを演じたシルヴィア・フークスも見事でしたね!
足技かっこよすぎでした。
躊躇なく鋭利なナイフで殺すラヴは感情のないレプリカントそのものでした。
なんと「鑑定士と顔のない依頼人」のクレアだったんですね!
うっそ〜!顔が違う!
儚く美しかった記憶があるので今作の殺気立った強いラヴに全く面影を見出せなかった!
いや〜女優ですね!流石!

ジャレット・レトは人間の底なしの欲望を持った二アンダー・ウォレスを演じていて他の映画で描かれてきた悪役とはひと味もふた味も違ってなかなか奥深い役でした。
盲目で白目があらぬ方向を見て話すその顔に野心と強い意志がみなぎっていて己の野望を貫く為に容赦のない裏の顔を持つ科学者を静かに熱演していました。
自分の手を汚さずに腹心であるラヴを操ってデッカードをさらわせその子供の行方を探ろうとするウォレス。
ここでレイチェルが登場するのだけど前作のレイチェルそのものと思っていたらなんとそっくりさんだったそうです!
すげー他人とは思えない!て位そっくりでありました。
前作で初めてレイチェルを観た時デッカードの気持ちよく分かりました。
一目惚れってある!と思った程息を飲む程に美しかったレイチェルを演じたショーン・ヤング。
前作以外で見てみたら綺麗だけどびっくりする位フツーでした。笑
真っ赤な唇とあの日本髪のような髪型と肩パットで尖ったモードな服が私の中ではショーン・ヤングの全て。
私生活ではジェームズ・ウッズとの破局後の奇行からのストーカーのイメージがあまりにも有名になってしまい私の中では悲劇の女優。
今作ではレイチェルの演技指導で参加したらしい。
キャストとして名前が出ていて嬉しくて涙が出ました。

一瞬ではありましたがエドワード・ジェームズ・オルモス演じるガフが出ていましたね!
ガフは前作でデッカードとレイチェルを逃がしてくれた刑事でした。
前作ラストではユニコーンの折り紙を最後にデッカードの家の前に置いて行きました。
「彼女も残念ですね」と名言を残して…
そのガフが今作ではおじいさんになって登場しますが今回の折り紙は羊でした。
フィリップ・K・ディック原作へのオマージュでしょうか。
原作も読みましたが当時の私にはよく分からなかった記憶があります。
今はもしかしたら理解できるようになったかもしれないという淡い期待を胸に機会があったら読み直してみようと思います。


続編はこれでもう終わりにしましょう。
無駄にこの名作が続いて欲しくはない。
リドリー・スコットがまた撮ると言い兼ねないと危ぶんでいますがもう十分です。
あの映画の様に違う監督で何作も続くのはもう勘弁してもらいたい。(面白かったけど…(^^;;)
でも続編出来たらまた心待ちにして観に行く自分が想像できて怖いですけど。
いずれにせよ1回観ただけで理解出来ているかはなはだ不明なのでもう一度観に行く予定です。
上映が終わるギリギリに人の少ない朝大画面で堪能したい!
今から2回目を想像してワクワクしているところです。



2回目(2017.11.11)
IMAX3Dで観てきました。
もう音がね凄くて体の底から痺れてくる感じ、堪らなかったです。
3Dだったので3Dメガネを借りて観たのですけど、普段眼鏡をかけている人はその上にかけてますか?
眼鏡は外して観ますか?
「ジュラシックワールド」を観た時は鼻がいずくて自分の眼鏡を外して観たのですけどそれもあんまりしっくり来なかったのですが今回はそんな事全く気にならなくて自分の眼鏡の上にかけて観てしまいました。(^^;;
これは間違ってますか?
すみません、普段3D観てないので慣れてなくて。(^^;;

やっぱり2回目ともなると内容が分かっているだけに泣くポイントは後半からやってきてずっと泣いていました。
ジョイが壊されてしまう時もデッカードがレイチェルもどきに会った時もKが囚われたデッカードを助けに来た時もそしてやっぱりラストも。
改めてハンス・ジマーの音楽の素晴らしさ!
IMAXで観てまた痺れました。
出来ればまた観たい!
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