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ブレードランナー 2049のTEPPEIのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.4
「ブレードランナー」は僕にとって不動の、最高のSF作品。その続編の製作が発表された時はある意味事件で、「スター・ウォーズ」よりも衝撃的だった。今回いち早く鑑賞したにもかかわらず、評価に悩んだ経緯もあり、やっとたまっている作品を一気にレビューできる。友人含め三人、1人はファンタジー大好き男子、1人はヨーロッパ映画大好きで前作を知らない全く初見の女子ひとり。基本アクティブな仲良しグループで鑑賞。まず本作は高評価ながらも興行的には苦しいスタートとなっているが、そもそも前作がカルト作であり公開当時は颯爽と打ち切りにされたので元々コアなファンが多い。鑑賞者ターゲットがかなり絞られているのも事実だが、続編でありリブートであるという立ち位置の「ブレードランナー2049」は率直な感想、完成度は非常に高い。だがオリジナルの残した神秘性とその圧倒的な力強さをよくも悪くもコピーしており、「保持」や「継承」とは程遠い。まずは大評判のビジュアルだが、僕も若干気になっていたが友人が「30年後にもソニーは会社生きてんだな笑」と半分笑っていたが、いくら配給会社といえどネオン街の広告にでかでかと現れるSONYの文字が環境破壊による地球外植民地として描かれるLAをガッカリさせた。それ以外の影の対比やドュニ・ヴィルヌーヴ監督ならではの演出が光る。例えば前作の酸性雨だらけのカリフォルニアはリドリー・スコットの出身でもあるロンドンの天候を意識していたが、今回はカナダ出身であるヴィルヌーヴのモントリオール天候を取り入れたクリアな風景も見どころのひとつである。彼の遠くから回すカメラの圧倒的な美しさと虚無感は作品そのものに命を吹き込んでいる。ストーリー自体ははっきり言って物足りなさを感じた。自分にとってベストのSF映画続編の''必要性''がどうも感じないのも事実である。これはヴィルヌーヴの「ブレードランナー」でありフィリップ・K・ディックの作品では断じてない。レプリカントと人間の関係性がまだ弱い。前作にあったカタルシスやフィルムノワールの存在感、もっと言えば説明的過ぎる。本作の主人公ブレードランナーKがレプリカントとしての感情や、自分との葛藤、そして虚無感、孤独感の伝わりは非常によくライアン・ゴズリングは文句なしのハマリ役。しかしこのKがレプリカントというのが最初の受け付けにくい箇所で、いくら新型といっても人間的過ぎる。いや、それは悪くないけど徐々に人間的になる姿を見せるべきだった。skin-jobと貶される彼の成長物語とミステリアスなストーリーは一見壮大に見えるが、2時間半以上の尺ではちょっと苦しい。偏見、怠惰、罪と罰、生命と豊富なテーマに溢れているだけあり「ブレードランナー」の色を損なうことはない。「昔は人間とレプリカントを見分ける事は難しかった」、有機体によって形成された人造人間レプリカントという魅力的存在と人間の関係性は哲学的な部分を想起させてくれる。という風に確実にSF娯楽作を期待すると火傷することを知らないで観に行くとアレかもしれないが、「ブレードランナー」ファンにとって世界観を損なっていない続編はそれだけで十分かもしれない。今作の場合、それぞれ新たなキャラクターは魅力的だったものの、意外にもデッカードの再登場には興奮しなかった。正直ハリソン・フォードにもうちょっとちゃんとデッカードを演じて欲しかったくらいに適当である。大好きなキャラクターなだけに肩透かしな部分はあった。物語背景やキャラクター表現は「ブレードランナー」としても申し分ないこだわりで満ちていたが、ストーリーはもっと難解でかつ意欲的なものが欲しかった。ストーリーがシンプルなので初見の友達もスンナリ見れたそうだが、「マニアック過ぎる。私は微妙かな〜」と言ってた。はっきり言って、僕も微妙だが作品自体の完成度は本当に高い。
総評として「ブレードランナー2049」はかつて「ブレードランナー」のファン達が待ち望んでいた世界観を描いており、前作のラストからの延長を考慮するとかなり僕たちの印象を変えてしまう続編かもしれない。より大衆向けに製作されたことは好感を持つべき点だが、人間とレプリカント、その永遠のテーマを終結させる決めてはない。懐古主義デッカードのI can't help falling love with you、Kとの衝突は間違いなく名シーンでありこの映画の全てを詰めてくれた。誰も見ることはないと思ってた「ブレードランナー」のその先、それは本作…になるかな…。
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