ロッツォ國友

ブレードランナー 2049のロッツォ國友のネタバレレビュー・内容・結末

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.6

このレビューはネタバレを含みます

***点数を修正し最下段に追記し再採点***


「データが、は↑かい↓ されてぃます」


いやー、悪趣味で陰険で暗くて捻くれてて歪んでる大人って大体ブレードランナー好きだよね!!!(偏見


ピアノバーを開くのが夢のライアン・レプリングさんと、ミレミアムファルコン号を降りてなお毛むくじゃらの相棒は欠かせないハリソン・フォードさんの共演がとってもアツい。
多分、ナウでヤングなイケメン役者の筆頭は、前作放映当時はハリソンさんで今はゴズリングさんなんだろうな。
時代の流れが配役にも活きている感じだ。



さて、映画全体の感想を正直に結論から申し上げますと、何というか、可もなく不可もなく、程々に良い感じに甲乙つけがたくほのかにまぁまぁふわふわっとした香りでアレしてました。
そんな雰囲気のアレです。説明します。


まず世界観や設定に関しては一切の文句がなく、前作の良い雰囲気をちゃんと継承しつつ進化させ、逆に今となっては流石にちょっとダサく感じてしまうガジェットとかはしっかりとイマ風にデザインし直している。
ココはとにかく良い。ちゃんとあの独特なレトロフューチャータウンに来れた。
何も変わっちゃいない。
ディテールがとても丁寧な仕事をしている。

…いや、というか本作は、何もかも全部丁寧である。



本作を観ていて、あらゆる未来荒廃SFの元祖である前作に対して、良い意味でも悪い意味でも「恐縮リスペクト」し過ぎていると思った。

前作にあった設定や世界観をとにかく壊さないように最大限細心の注意を払って作っているが、それゆえストーリーの展開までもがとてつもなく鈍重且つ無難に仕上がってしまった。


物語は、コトの真相そのものは決して悪くなかった。
割と見せ過ぎな予告から想像のつく範囲を超えて更にもうひとヒネリ加えられており、話のオチはしっかりと用意されている。
またそのネタバレ自体が前作との強い繋がりにもなるものであり、予習復習の重要度はやや増したがちゃんと話の流れを汲んでいる。
ここは素直に良かったと思う。


但し、その事実に辿り着くまでが遅い。
辿り着いた後も遅い。
とにかく遅い。
というかゴズリングの足が遅い。
前作で積み上げたものや他作品からのリスペクトの気持ちを汲んで丁寧に慎重に丁重に、なるべく重厚感を出そうした結果、ただ焦らしているだけになってしまった。

上述した通り雰囲気やディテールは前作のものを全く壊さずに改良しているので、観ている映像に対する退屈感はない。
しかし、とは言えいちいち勿体ぶっているようで非常に気になる。
雰囲気を味わうのも勿論重要だが、始めから終わりまで全部雰囲気一辺倒では流石に鈍重すぎるのではないか。


また物語のテーマとしても、前作では人間がレプリカントに対し、自己を相対化しながら命のありようやレプリカントそのものの存在を問うていたのが、本作は主人公がレプリカントである自分自身の存在を問う話になっている。
つまり前作の「目」が外に向いているのに対し、本作の「目」は内に向いているのだ。

別に悪いテーマ選びってワケじゃないが、こういった話を壮大感を出してジックリ焦らせば焦らすほど肩透かしになる気がする。
そもそも問いが内に向いているのだから、真相も結論も小さくまとまらざるを得ない。
結果的に「え、これだけの話だったの?」という感じ。
続編を作る気満々なら分かるが、でも、ココから広がるようにも思えないし……


前作の恐縮リスペクトと書いたが、前作は狭い街並みの中をかなりのテンポで話を進めていた点を考えると、リスペクトポイントもちょっと惜しい感じがする。
さすがに前作最大のモンスターインパクト強烈パンツ一丁白ハト掴み走り幅跳び白髪目潰し野郎のようなキャラクターだって居ないのだし、やっぱり前作を超えるにはハードルが高過ぎたと思う。

ビジュアルも設定も話も全く悪くないんだけど、語り口がストーリーのスケールに合ってないと思った。
今さらインパクトでゴリ押すほどのネタだって無いだろうし。
しょうがないんだろうけど、なーんか、うーん。。



とまぁ!そんなこんなで苦言が続きましたが、設定や世界観はバッチリ満点サイコーです!!
さすがに丁寧に作っただけあり、大雨の降るネオン街の雰囲気をそのままに、前作以上に未来荒廃感を強めながらより細かい描写が多用されていて味わい深い。

特に自宅用ホログラムカノジョがもう最高。ずっと見てられるし現実味あるし空飛ぶ車より欲しい。
あの、可愛い。えろい。
しかもオプション購入でカノジョの自由度が増して喜んでくれるんですよ?
コミュ症の引きこもりから幾らふんだくるつもりだウォレスの野郎。
ふざけやがって。
幾らだ?幾ら払えばいい?


あとは安っぽい広告のごはん自販機とかね、意味不明なバレリーナCGとかね、「お酒」とかね。
やっぱりアメ公には日本語や中国語やハングルはヘンテコデザインの象徴みたいな意味合いがあるのかな。
ナンバープレートにカタカナで「ロサンゼルス」って書いてあるんすよ…

こういうデザイン関連は悪趣味仲間と酒を酌み交わしながら語るに尽きますな。
3時間あって本当長いけど、おしゃべりネタとしてはこの上ないほど上質で良い。



前作の時代設定である2019年が間近に迫り、さすがに人造人間は作っちゃいないが映像技術はトーゼン進化しているので、前作にはほとんど無かった「引きの画」が沢山観れる為世界の描写もかなり細かく分かり易くなっている。
あとBGMやSEもやたら重低音が多めなので、劇場の音響で胸を震わせながら観るのが絶対に良い。

何より未来荒廃SFの先祖様がお盆でもないのに帰ってきたんですから、くだらないこと言わんと劇場で観るべきじゃ。


言いたい事も無くはないけど、ガッカリとかそういうのはないし、何よりあの世界をもう一度楽しめるという、その事実だけで観る意義観る意味があるとも思う。
ヘンテコな日本語表示や音声をニヤニヤしながら楽しめるのも我々の特権ですしね。
いやゴズリングさん、普通に英語で受け答えするんかい!


無いと置いてけぼりで分からない!ってレベルじゃないけど、余裕があるなら予習復習はあった方が良いかな?ぐらいなもんすかね?

興味ある方は、前作も合わせてぜひ!!!!



<二回目を観て心に電流が走ったので追記>

レプリカントは、人間がまさしくその叡智によって、奴隷として好きなように扱う為に産み出した存在。
しかし、生命を持ち、身体を持ち、言葉を持って心を宿し始めた彼らは、人を模して作られた偽物だったとしても、生きとし生ける存在として「本物」なのではないか?という問いが一作目。

本作ではそこから更に問いを広げ、では創られた命から産まれた者は?生命無き者は?というところまで範囲を広げている。

そして創った生命を自由に弄ぶ傲慢さを体現したのが、新型レプリカントを産んで殺したウォレスであり、「弊社製品」を踏み潰したラブ。
彼らこそ、反逆し出した途端にレプリカントを撃ち殺す前作の人間の在りようを示している。


自分が何者であるかは、記憶でも記録でもなく、まさしく自分が何を考え何を為すかによって自ら決めるものだ。
ジョーは、デッカードの子ではなかった。
奇跡の体現者ではなく、また木馬の記憶も他人の物だと知った彼はひどく狼狽する。
だが彼は、真実を知った上で、デッカードを娘に会わせる決断をする。

「お前は俺の何だ?」というデッカードの問いに対して彼の言った「娘さんに会え」は、答えになっていない。
だが、彼にとってそれは間違いなく「答え」だ。
触れることすら出来ない者を愛した彼は、その最期の時に、実在する娘を愛ゆえに遠ざけたデッカードに会わせる決断をした。

彼が何者であったかは分からない。
だが、あの雪の降る階段では、彼は間違いなくジョーとして生きたのだ。
それで十分ではないか。

前作の哲学的な問題の範囲を広げながら同じ問いを投げ掛け、尚且つその答えにも近づかんとする表現をした。
これぞ間違いなく、「ブレードランナー」の二作目に最も相応しい作品と言えよう。
見事だった。
点数を、3.5から修正したいと思う。
ロッツォ國友

ロッツォ國友