よしや

ブレードランナー 2049のよしやのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
3.3
大作でとにかく長い。ここまで長い必要があるのか、と思うくらい長い。画面も暗く重々しい展開も多く観る人を選ぶ。

これはブレードランナーで雨が降って暗い、どぶネズミが都市の排水溝を駆けずり回るような映画で構わないのだけど、ストーリーが停滞しているのは別の問題だ。

サスペンスフルには進ませようとはされているのだけど消化不良のような引っかかりのあるノロノロという進みで、特に前作を観ている人やある程度の勘の鋭さを持つ人は展開がもどかしいだろう。

また敵役のラヴのアクションやウォレス博士の造形もボヤっとしてチープでもう少し世界観に則ってダークにやってくれよと注文をつけたくなる。

前作でありカルト的SFの名作「ブレードランナー」への敬意は撮影監督のロジャー・ディーキンスと監督ドゥニ・ヴィルヌーヴにより余すところなく伝わってくる。この映画の多くは近未来的で荒廃したビジュアルによって成立していると言っても過言ではないし観客もそれにお金を払いに行っている。

しかしあまりに大切に「ブレードランナー」を意識しすぎた結果、良い絵も見せないといけない、話も複雑にしないといけない、会話も哲学的でなければいけない、アクションもないと不満だろう、テーマも深淵にしよう、続編としての新たなオリジナリティも必要だ、という風にこれでもかと詰めこまれた要素が渋滞を引き起こしてしまった。

長大な風景のシーンをテンポよく編集するか、ストーリーを早め早めに展開するかすれば、それが良いかは置いておいて、もっと観やすい映画になっただろう。

だが悪い所ばかりの映画ではない。
何度も言及した昨今の有象無象のSF映画群を置き去りにする圧巻の映像美は劇場で観ないのが失礼といった所だろう。

また監督をドゥニ・ヴィルヌーヴとした人選が良い。彼が得意の暗い画面での絵作りであったり、サスペンスフルな作風であったりというのが上手くブレードランナー本来の世界観に活かされていた。

前作「ブレードランナー」が未見で(何しろ高度なSF映画なので)不安のある観客にも優しい。やりすぎない程度に、でもきちんと観客が付いて来れるように分かりやすく作ってくれており、これは監督作ボーダーラインでも感じたことだ。

確かにオリジナルを観ていないと人物関係がピンときにくい所があり、観ないよりは観てからの方がベターであろう。

主演のライアンについて佇まいから男らしくカッコいいし、どの映画でもいい仕事をしてくれる。

一応のヒロインにあたるアナ・デ・アルマス。ノックノックというホラー映画でハイトーンな髪色、かきあげた髪型のゴージャスな美女という役回りで観たことがあるのだが、今回は髪色はダークトーンでポニーテールや前髪を作る落ち着いた髪型が多く、落ち着きとキュートさを手に入れたルックス。こちらの方が断然に良い。

丸みを帯びた輪郭とかとにかく可愛らしく日本人好みの顔。ここまで映画によって印象変わるのかと感心をした。ただヒロインにしては影が薄いようにも感じた。

映画会社の思惑に反し、ブレードランナーに感化されたSF好きな中年男性しか観に来なかったという話はこの映画を気にいるのが批評家とSFオタクしかいないと言っているようなものである。
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