このレビューはネタバレを含みます
また、ここに伝説を観た。
前作は、初見では魅力が分からないどころか頭が混乱したものだ。
それでも見終わった後にどうしても気になって見返すうち、この退廃した世界と生命の物語に魅了されてしまった。
今回のヴィルヌーブ監督によって描かれた30年後の世界にも、また観たくなる魔力があるのは、近年観るどんな続編よりも全監督の世界を継承しているように思えるからだ。
オープニングからファンを喜ばせるシークエンス、退廃的なセットの再現率や、要所要所日本語の使用。
継承しつつ、監督の色も出し
レプリカントの進化のみならず、ジョイというホログラムという新しい虚構の存在は斬新で、
また生きていることは何であるか、五感で感じることは何であるのかを考えるきっかけになった。
デッカードの消息、レイチェルのその後と秘密には息を呑む展開。
ライアン・ゴズリング演じるブレードランナーK自身がレプリカントであり、レプリカントがレプリカントを裁く皮肉。
それを命ずる人間の方が身勝手で、レプリカントよりも生を弄ぶ愚かな存在なのか。
生を受けたレプリカントを目の前に流すレプリカント、ラヴの涙の意味は、もしや人よりも生の尊さを知っていたのか
本当は
人であることを望むレプリカントこそ、より人間らしいのか
レプリカントが、より人間に近付こうとする思いの根源とはなんなのか
人間が生み出したレプリカントではあるが、結局レプリカントとはなんだったのか
毎度、この虚構の世界に存在する
虚構の人物達の物語に入ると
現実との違いや狭間を考え
結果その答えに辿り着かない。
いや
明確な答えが出ないこと、それについて議論することがこの世界の楽しみ方なのかもしれない。
ソフト化の際には、ぜひ副音声解説を入れてもらいたいところ。