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ブレードランナー 2049のゆずのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
4.4
前作から35年経っての続編。物語の中でも30年の歳月が流れている。
序盤から驚きの人物設定。今回はどんな作品になるのだろうと引き込まれる。
ライアン・ゴズリング演じる主人公“K”の物語になるのだろうと見ていたら、意外にも30年前の話がメインになってくる。予告で散々見たハリソン・フォードが実は特別出演ではなく、むしろ彼演じるデッカードの物語だったのが意外だ。
前作でキレイに終わったはずの話の「その後」を持ち出すのは賛否が分かれると思う。過去の話をほじくり返して、しなくてもいい苦労をデッカードに課しているのだから。言うなれば、公式によるまったくの新作というよりは、前作「ブレードランナー」の要素を元にファンが考えた同人誌・ifストーリーを見せられた感じがする。
そしてそれはあながち間違いでもない。前作は原作小説「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とはかなり印象の異なるハードな内容だったし、その原作には「2049」のことはひとつも書かれていないのだ。つまり「ブレードランナー」は原作を離れてひとり歩きを始めたと言ってもいい。
原作者、あるいは前作の監督リドリー・スコットさえ当時は予想しなかったひとり歩きが、本作の醍醐味のひとつだと思う。デッカードとレイチェルの終わったはずの物語には続きがあった。それを新たな悩める男Kが紐解いていく。
もちろんこの物語がどこに向かうのか鑑賞者は知らない。下手をすると、前作に対する評価まで変わってしまいかねない。本作が扱うのはそんなデリケートな内容だ。

前作同様、人間存在についても切り込んでいる。人間と人造人間である“レプリカント”が混在する社会を描くことで、人間とは何かについて浮き上がらせる。
しかし、本作はKの視点を通したことによって、より深い考察を提示していると思う。
人を人たらしめる記憶とは何なのか。生きた証を残そうとすることや、何者かになりたがることについて。それから、他者への愛について。
2時間40分の長尺の中に、そんな示唆的なエピソードが詰め込まれているのが本作。テンポはゆっくりなのでじっくりと味わいながら観ることができた。



11/1 ブレードランナー2049 IMAX3D字幕 @TOHOシネマズ仙台
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