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ブレードランナー 2049のKYのレビュー・感想・評価

ブレードランナー 2049(2017年製作の映画)
3.6
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作。

SF映画の金字塔『ブレードランナー』の続編。前作から30年後の2049年を舞台に、違法レプリカント(人造人間)処分の任務に就く主人公が巨大な陰謀に巻き込まれる様子を活写する。

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前作がレプリカントを通して『人間』という生命体そのものを描いていたとすれば、今作はレプリカントを通して『一個人』を描いている作品だった。

そのためにレプリカントの寿命つまりは『死』で描いた前作と対比的に『生誕』を通して主人公のアイデンティティを表現していた。

自分が特別な存在かもしれないと希望を持って行動するもそれが最終的に違うとわかり、それでも自分の存在価値を見出す。ある種人間の生涯に近い描写を映画内で見ることができた。

作りとしては、前作よりも主人公像も見やすい。はっきりとレプリカントとする事で前作と違い逆説的に人間らしい存在になり、感情移入はしやすい。

現代人の大きな問題『孤独』を背負わせ、そこにそういうキャラが十八番のライアン・ゴズリングが演じるという作りも抜かりない。

ただ物語動機の自分探しみたいな展開に関して引きが弱い。仮にもその奇跡の子が本人だったとして、その先に面白い展開の予感を用意してないので『だから何だ』と思ってしまう点もあった。

レプリカントが一つ上の人間的な存在になる事を示唆してるけど、そこがイマイチピンとこないというか。それは多分レプリカントと人間の物理的差異を物凄く曖昧に描いてしまってるからな気もした。

美術に関して前作との差異を見せるためにタルコフスキー的な壮大な全景でドーンと見せたりする表現もノーランはじめタルコフスキーの影響下のSFが横行してるので驚きはない。

かといって前作の世界観を踏襲したネオンに日本企業のロゴが見えたりするけど、今作になるとそれがやけにダサく見える。今どき『Sony』。 贅沢な話だが圧倒的なインパクトはあまり感じなかった。
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