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ワンダーストラックのYuのレビュー・感想・評価

ワンダーストラック(2017年製作の映画)
4.0

“驚きと幸せの一撃”=ワンダーストラック!
ラストもう一撃ガツンと欲しくなった自分がいたが、トッド・ヘインズの目指した映像美と、決して多くを語らず進んでいく物語に、もう117分間ずーっと釘付けだった。

なにより狡猾なまでに上手かったのが、まさに観てる者を、あの少年少女になったかのように手探り感覚にさせる演出。

モノクロかつサイレントムービーな1927年では映像だけで小出しで説明していき、人物関係が分かりそうなんだけど推測の域を出ない。
一方でカラーの1977年になると音も声もあって、ホッとするぐらい物語を追えるんだけど、いきなり1発目のワンダーストラックでこちらでも理解を困難にさせるw

気がつけば周囲に誰も知り合いがおらず、ニューヨークの街で迷い込む彼らの姿は、まるで言葉を発することが許されず、周りは知らない人だらけのスクリーンを前にいる僕ら観客のよう。

そしてワンダーストラックが幾度となく起こる度に、少年と少女の距離に変化が訪れ、比例するように観る者も徐々に理解が進んでいく。

ラストの丁寧な説明に、観終わった後は色々と考えさせられ余韻が堪らない。

オークスくんも、それを包むジュリアン・ムーアも、自身も聴覚障害を持つミリセント・シモンズも、とても素敵な笑顔。
更には使い古されつつあるあの名曲が子供達の声で流れるエンドロール。
それは全く新しい印象で心の穴を埋めるかのように、幸せをもたらしてくれた。
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