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ワンダーストラックのKSatのレビュー・感想・評価

ワンダーストラック(2017年製作の映画)
4.0
1977年と1927年のふたつの時代における、耳の聞こえない子ども二人の家出噺が時空を超えて繋がるという、絵本のようなものがたり。それは、原作者が絵本作家だからこそかもしれない。

それぞれのとる行動が重なってゆき、時代を超えて繋がる様をモンタージュで描いている部分については、巧い部分とそうではない部分があったように思える。これは、同じ行動を「カット」単位で比較し繋げるのではなく、「シーン」単位でそれをしているためだろう。

この監督は人の動きに対する関心よりも記号に対する関心が強いきらいがあり、それは過去の「Superstar: The Karen Carpenter Story」などを見ても明らかだ。後半に出てくる回想場面をミニチュアと人形で表現するやり方も、同作のセルフパロディのようだ。

しかし、それでもこの映画を愛さずにはいられないのは、なんといってもプロダクションデザインの素晴らしさとエド・ラックマンの撮影のおかげだろう。
特に、デザインはひとつひとつの小道具にしても抜けの街の情景にしても総てが緻密でリアルなのはもちろん、洗練されており、しかしながら絵本のような愛嬌に溢れている。

また、個人的な話だが、大学で撮った卒業制作が本作に近い構造を持っていたことも、本作に対する思い入れに繋がっていたことも、ここに付け加えておく。
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