北野武は同じ聾者の映画として『あの夏、いちばん静かな海。』を撮った。手話に対するよけいな字幕なしで。
このトット=ヘインズ監督も同じように字幕を付けず、さらに聾者の女の子のシーンでは、サイレント映画の表現を採った。
そこがじれったいのだが、2つの時代がつながるときに感動に変わる。
書籍や図書館、「ジオラマ」もテーマなので、博物館学的なものが好きなコレクター気質の観客もハマるはずだ。
そして、ミッシェル=ウィリアムズ。『ブロークバック・マウンテン』のデビュー当時からずっと観てきたので、無条件で出演映画を追ってしまう。デビュー作で共演したヒース=レジャーと結婚していたという事実も、この作品の夫をなくしたことと重なって、感慨深い。
万人にはウケにくいかもしれないが、普遍性も持った映画だった。
ジオラマの作り込みはそのまま監督の作り込みで、こだわりでもあり、丁寧な職人気質にも感激した。