RAY

カフェ・ソサエティのRAYのレビュー・感想・評価

カフェ・ソサエティ(2016年製作の映画)
3.6
“忘れられない”


客観的に言えば、本当に本当にかるーい人たちのかるーいお話をウディ・アレンが描くとちょっと雰囲気出ちゃいましたな映画だと思いました。
僕の場合、そこまで深く考えずに観たのでそれなりに面白かったです。

ただ、この作品は特に観るタイミングを選ぶ作品だと思います。
理由について書く前にあらすじを。


〜STORY〜

主人公のボビーは野心を抱き、映画業界の有力者である叔父のフィルの元で働き始める。
ボビーはフィルの秘書であるヴェロニカに心を奪われるが、ヴェロニカには交際中の別の男性がいることを知らず、彼女との結婚を思い描くが…。


あらすじだけだとまったくかるーいお話な感じはしないかもしれませんが、間違いなくかるーいお話です。
かるーいお話をウディ・アレンが描くのだから、さらにかるーいお話になっているのかもしれませんが。

交際相手に別の相手がいた時、自分だったらどうするだろう?
少なくとも余程好きな相手でなければ奪い取ろうなんて僕は思わないと思います。


——あなたに忘れられない恋人はいませんか?


必要以上に物語に触れず、この映画を紹介するのなら、僕にはこの質問以外には考えられません。

過去が美化されることは確かにあるし、思い出は美しくしたいもの。
ましてや、自分が一瞬でも好きだと思った相手のことやその思い出であれば尚更です。

だけど、それらの思い出が一律かと言えばそうではない。
少なくとも僕はそうです。

あの人のそこが好きここが好きと言った様な理屈ではなくて、一緒にいて嫌な部分、辛い部分も含めて好きだと思える感情。

そんな“状況”に酔っているだけなのでは?と問われればそうかもしれません。
ただ、たとえそうであったとしても、理屈抜きに好きだと言う感情は紛れもなく真実なのです。

多分、そんなことを思える相手は数少ないのだろうし、もしかしたら世界にただ一人かもしれません。

“タイミングを選ぶ”と表現した理由のひとつは、運命と思えるのかどうかと同様に、好き嫌いの捉え方だって、その時の心持ちひとつで変わるということです。

たった一度の人生の中で、ただ一度かもしれない運命を選択する。
色んなことをそっちのけで考えるのであれば、それも道なのかもしれない。
それこそ、世界中を敵にまわしても良いと思える程の選択だと思うのなら。


このレビューを書きながら思ったのですが、ウディ・アレン作品では過去への賛辞もあれば、皮肉も時折描かれます。
たとえば、『世界中がアイ・ラヴ・ユー』では、キャストはミュージカルだと知らされず撮影が始まったそうですが、それもまた映画で表現したいことを描く為の術でした(過去レビューより)。
冒頭、かるーい映画だったと表現しましたが、今にして思えば、そのことは恋や人生への皮肉だったのかもしれません。

いずれにしても、捉え方は観る人に委ねられます。
そう、タイミングはあなた次第。

“気が向いたら”ご覧下さい。


観て良かった。
RAY

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