chiakihayashi

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4.5
@試写。
ドイツの女性監督によるドライでクールでビターでスウィートでくそリアルでシュールな(?)コメディ。

ヒロインのイネスは金髪でいかにも知的なバリキャリ。ルーマニアのブカレストでコンサルティング会社に勤め、上司の覚えも目出度く、顧客の接待もそつなくこなし、上海支社への転勤を狙っている。一方、母親とは円満に離婚し、音楽教師の仕事もほぼ引退状態で年老いた愛犬と暮らしている彼女の父親は、架空の弟になりきって荷物を届けに来た配達員を驚かせたりとおふざけが趣味の人間。ある日、イネスが会社に戻ると、ロビーに不審な闖入者のように父親が座っている! が、イネスは素知らぬ顔をして通り過ぎる。後でアシスタントを送り込んで、伝言を伝えさせるのだけれど。

すったもんだあって、なんとか帰国する父親を見送った夜、女子会で「最悪の週末だったわ、父が何の連絡もなくやって来たのよ」と話していたら突然、背後からぼさぼさカツラに出っ歯の入れ歯をした父親が現れて「トニ・エルドマンです」と名乗る。その後、至るところにトニ・エルドマンは出没してはイネスにちょっかいを出す。なにしろロクデモナイ同僚とつきあい、時にはドラッグにも手を出している娘が心配でたまらないのだ。「私はパパの大嫌いな資本主義の尖兵よ」と憎まれ口をたたくイネスだったが、トニ・エルドマンとの否応無しの珍道中で次第に心の深い部分を揺さぶられ、ついには衝動的に文字通りすべてを脱ぎ捨てる暴挙、否、快挙に出る・・・・・・!?

いや、もうビックリしたなぁ、こんなブッ飛び方ができる女性監督が現れるなんて! そう言えば、6年前の前作『恋愛社会学のススメ』(DVDで鑑賞)はひと組のカップルの物語だったけれど、そのシニカルでスパイシーな展開に目をパチクリさせながら見たっけ。
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