フクイヒロシ

ありがとう、トニ・エルドマンのフクイヒロシのレビュー・感想・評価

5.0
トニ・エルドマンこそガーディアン オブ ギャラクシー(銀河の守護神 単数形)でしょ。

単なる父娘の感動話かと思いきや、世界の社会情勢を斬りつつ、どこまで行くんだって発想の飛ばし方で観たことないシーンを次々観せてくれる快作。
僕は泣くより笑いました。

ビッカビカのキャリアウーマンの娘(イネス)が父と対峙するときは6歳くらいのちっちゃい女の子だった時の姿が後ろに見えるのが不思議だった。
きっとこの2人がちゃんと父娘になりきって演じていたから。
どんなに父をうっとおしく思ったり、突っぱねたりしても、少女の頃に緑いっぱいの庭で追いかけっこしていた頃の顔が思い浮かぶ。
子供の頃のシーン一回もなかったのに。

2時間42分があっという間とは思わなかったけど、、寝なかったし、飽きなかった(笑)。
それは結構衝撃的なシーンがいいタイミングで登場するから。

誕生日のパーティーのシーンは今年観た映画の中で1番笑った。。
僕はそのパーティーに参加する勇気はなくてそれがとてもふがいないので、、いつ招待状が来てもいいように鍛錬していきたいです(精神を)。。


僕自身は親の過干渉に苦しんできたので、あまりにもこのトニ・エルドマンがうっとおしすぎる父親だったらこの映画きついなぁと思ってたけど、そんなことはなかったですね。

決してトニは自分の理想を娘に押し付けたいわけでも、自分の人生を娘によって幸せにしてもらおうと思っているわけじゃなくて、純粋に「そういうのってどうなの?」と疑問を持っているだけで、決して自分の価値観にがんじがらめになっている親じゃなかった。
だから見てて苦しくなかったし、愛を感じられた。


イネスは会社ではキャリアウーマンであり、恋人の前では1人の女性であり、父の前は娘。

誰しも日常のいろんなシーンで「それ用の自分」がいるけれど、そのうちのどれかの自分が自分自身を苦しめるものになっていないか注意しなきゃいけないんだなと思った。
どの自分が一番自分らしいのか。
できるだけその自分でいる時間を長くしたいね。


繊細で緻密でメルヘンで豪快。
もう一回観たい。