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ありがとう、トニ・エルドマンのne22coのレビュー・感想・評価

4.6
2017年 劇場鑑賞43作品目

予告を見たときにはもっとコメディー寄りのよくある笑って泣ける〜!的な親子映画かな。。。それにしては2時間40分て長いな。と思っておりました。

試写で観る機会に恵まれ観賞したところ、思いっっっっきり裏切られ、衝撃を受けました。良い意味で!その衝撃も、殴られるみたいな一発バーンってのじゃなくて、弱い電流をずっと受け続けるようなそういうやつ!!!(語彙力問題すみません。)

でも、何が良かったかって説明するのがとても難しい。昨日見て、いろいろな思いが巡って巡って、一日経っても言葉ではなかなか説明しにくいんだけど、本当に人間らしい複雑な感情が混じり合った事で出て来てしまう行動(すっごく突拍子もないものも含めて)が繊細に丁寧に描かれていて、振り返れば振り返る程いろんなシーンが複雑に絡み合い、余韻の幅を拡げているなと思います。

女性の監督ならではの感覚的(感情的)な表現にも女子はうなずけると思うし、男子はギョっとすると思います。

親子やそれを取り巻く人々のみで終わらず、今の資本主義社会やグローバル化、死生観に対する監督からのメッセージが、一方的でない感じで込められているのも絶妙に良かった。

不器用すぎる父親に目が行きがちですが、娘も相当不器用。それがまた親子らしくって、二人が互いを見るその軽蔑の眼差し、心配の眼差し、諦めの眼差し、愛しさの眼差しにいちいち感動してしまう。(それくらい演技が素晴らしいのも見物)そういった意味でワンシーンに込められている情報が多いので、自分自身、一回ではこの作品を観きれていない印象を受けました。

ハリウッドリメイクが決まっているみたいですが、ハリウッド作品になってしまったら人間のこの難解な素晴らしい繊細さはどう描かれるのかすこし心配でもあります。

とにかく、いろいろ書きましたが、

私が2017年「だまされたと思って絶対観に行ってほしい映画」カードを一人に一枚だけ渡せるとしたら、今の時点で思いつく限りのみんなに配ってしまうであろう作品に出会えました。(このレビューを読んだ方にも渡します。)

公開されたら絶対また観ます。
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