イタズラ好きの父親とバリバリキャリアウーマンの娘が織りなすヒューマンドラマ。父親がとにかくウザいのだけれど、でもそのウザさが今、必要なんじゃないの的な映画なのかな。ただ、はっきりとわかりやすいことを言っていないような気もしていて、人によって好みも解釈も分かれそうな気がする。
経営コンサルタント会社に勤務している娘は重要な仕事を任されていて、アシスタント付き、毎朝車が迎えに来るくらいの地位にいる。立て板に水のプレゼン、社交的な会話など見るからに仕事ができる雰囲気。
一方の父親はイタズラとオヤジギャク大好きで、娘とたくさん話をしたいと思っているものの、オフタイムでも仕事の電話をしているような娘は真剣に取り合わない。しかし、ここで引き下がらないのがこの父親の真骨頂。とってもウザく娘に付きまとう。
娘は仕事ができるからこそなのか、とにかく殺伐とした雰囲気。いつも車の中で寝ているし、ゆっくりする時間もなければ、心に余裕もなく、歓びも、笑顔もない的な仕事人間。父親はそんな娘を心配している。
そして邦題とポスターから予想される展開になるには、娘のストレスがどんどんたまって、爆発する必要があるからなのか、娘の仕事のアレコレと父親の寒いイタズラ及びオヤジギャクに、162分間じっくり付き合わされる。
この父親が娘のストレスの大きな要因のひとつだろと思うけれど、娘が今の自分に必要なのは、イタズラ&オヤジギャク、つまりユーモア→人間性みたいなことに気づくには、これくらいのしつこさが必要だと言わんばかりだ。
一方、娘の職業と手掛けていた仕事がリストラのコンサルということから、資本主義の論理が幅を利かせる世の中において、合理性や効率性だけでない、“ウザさ”が必要ではないかというメッセージも込められているのかな、とも感じる。
ただ、自分的には、娘がストレス爆発の理由のひとつを父親のウザさに求めてもおかしくない気がして、『ありがとう、トニ・エルドマン』にならないシナリオの方が現実的な気がしてしまう。ひょっとするとどこか重要なポイントを見落としているのかもしれない。
もっとも『ありがとう、トニ・エルドマン』になっても、リアルっぽい終わり方ではあると思う。娘は父親に慰めを感じただろうけど、結局は父親に付き合ってあげただけのようにも思える。
はっきり、スッキリ終わらないところがいかにも欧州の映画という気がするけれど、リメイクが決まっているというハリウッドがどう描くのか、今から気になる。
●物語(50%×3.5):1.75
・実はなんだかよくわからない。いろいろな見方がありそうで、そこが良いのかも。
●キャスト、演出(30%×4.5):1.35
・娘が仕事のシーンが良かった。それから男女関係のシーンがびっくり。殺伐すぎ。あんなのはじめて観たかも。モフモフは向こうではウケるのかな。
●映像、音、音楽(20%×3.0):0.6
・特に印象に残ることはなかったかな。