“2017年ベスト10がひっくり返るほどの大傑作!!”
最近の映画は何かと“ハラハラドキドキ飽きさせない展開”に拘りすぎたり、オープニングから全快でどんどん失速していく映画が多い。そういった映画へのある種のアンチテーゼにも感じられた。
正直、普段あまり映画を観ないというような人にこれを勧めてもピンとこないかもしれない。
非常に“間”を活かした演出が多くわかりやすい笑いのアメリカンコメディとはテイストが異なるから。
ただその“間”や役者陣の“表情”から人生の悲喜こもごもがこれでもかとビシビシと伝わってきて感じ取れてジワジワと面白くなってくる素晴らしい作品。
主人公のトニ・エルドマンはどう見てもおかしな言動ばかりしているが、それでもふと娘を思う愛情が垣間見えたり人生の真理を突いてくる瞬間があったりする。
それをリアルにドキュメンタリックともとれる手持ちカメラでの撮影で見事に捉えている。
ベランダで娘が堪えきれず泣くシーンや、あのホイットニーヒューストンの名曲を歌うシーンは涙なしでは観られない。
しかも更にその後に全裸パーティーシーンや、二度もあっと驚くシーンなどが用意されていて本当に良い意味でぶっ飛んだ作品。
仮面を被っていく父親と、衣服を脱ぎ捨てていく娘という対比も素晴らしい。これが女性監督ということだから本当に凄い。非の打ち所のない傑作。