東京キネマ

ありがとう、トニ・エルドマンの東京キネマのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

映画のイントロダクション曰く「あまりうまくいっていない父娘関係の中、父は別人「トニ・エルドマン」となって娘の前に現れ・・・」となっているけれど、これは間違い。父はあくまで父として登場します。ピエロのような道化のサイン、クリスマスに限定しないサンタさんのような存在として途中で変身するというだけです。

多分、この娘さん、さんざん連絡を渋ってたんでしょう。そこで父親は我慢できずに、娘の赴任先にも連絡せずいきなり登場します。この場面で、観客は娘さんの立場になるか、父親の立場になるか、の選択を迫られことになるのですね。(この仕込みが案外効いてます)父親の立場になると、このバカ娘、もちょっと親切にせんか、と見続けることになるし、娘の立場になれば、こんな大切なプレゼンの前にきやがって
迷惑なんだよジジイ!、となるんで、どちらの立場になってもサディスティックな感情が増幅しちゃう。

中盤になるとベクトルは逆向きになります。父親は「トニ・エルドマン」になって虚言を吐き続け、娘は反省も込めて付き合ってあげることで和解に向かうという展開。というか、本当は父親がまともで、娘が変態だというのがバレちゃうんですがね。

うまいなあ、と感心しましたよ。どこにでも転がっているような日常の出来事。誰でも振り返ればありそうな家族同士の諍い。ちゃんとドラマになっているの。「トニ・エルドマン」の黄ばんだ乱杭歯の入れ歯は、みなさん勝手にストーリーを想像してくださいということなんでしょうが、最後、娘が親父のその入れ歯を自分で嵌めちゃっている姿に思わずコーヒーを吹き出しましたよ。。。
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