極上のロードムービー
少女×旅×非アメリカ人が切り取るアメリカ
18歳の少女、スターが劣悪な環境に見切りをつけ、女性リーダー、クリスタル率いる十数人の若者たちの仲間に加わる
フォードのワゴンで街から街へと雑誌販売をしながら旅をする
シャイアラブーフが要所を引き締めてはいるけれど、カンヌの新しい顔といっていいイギリスの女性監督アンドレアアーノルドが街中でのオーディションで発掘した若者たちをキャスティング、その日の大まかな台本を当日に伝え、セリフは即興にまかせている
そして、ケンローチ作品、アンドレアアーノルド主要作品すべてを手がけるアイルランドの撮影監督ロビーライアンは手持ちによる撮影に徹していて照明もほとんど使っていない
特に有り体なマジックアワーをあえて避けて新しい表現に立ち向かったようにも思える日没後、夜明け前のシーンが秀逸だけれど、昼間の空のトーンも独特で、ドキュメンタリータッチでありながらどことなく深みのあるカラーグレーディング
様々な要素が呼応しあって特異でエモーショナルな空気感が漂う作品
貧富の差であったり、テーマらしきものはあるにはあるけれど、スターを通して今のアメリカを垣間見ながら、彼女と呼吸を揃え、時間を共有することがとても貴重に思える愛おしい作品
これは映画があるべきひとつの形だと確信を持って言える、そんな作品
時折インサートされる植物、虫、動物のカットが印象的で人間も含む生きとし生けるものすべてへの誠実な眼差しを感じる
使用曲もなかなか(ちとうるさめだけど)
主演でこれがデビュー作となるサシャレーンが少女の揺れる心理を体現していてスターそのものに見える
このあと立て続けに4本の作品に出演、クロエグレースモレッツ、マリサトメイらと共演を果たしている楽しみな新星