[静かに追う]
あの時、ドアを開けていれば...
診療受付所の時間が過ぎていたある日、女医のジェニーはドアを開けなかった。
彼女は、その時の後悔を追い続ける事になる。
全編にわたり彼女の視点で構成されている本作は、音楽はなく、淡々とした流れで事件の真相を追っていく。物語が加速するようなサスペンスのトーンではなく、かといって人間の内面描写で構成しているわけでもなく、「少し距離をとった」絶妙な「距離感」で制作されている。
誰しもが経験した事のある罪悪感や「あの時ああしていれば」という感情を、女医という立場から街の人との交流によって、真実と共に消化(ここでは昇華かもしれない)しようとしていく。
とても感動したのは、
ひとつの事件から見える、絶対に消える事はない街の「闇の側面」に対し、ひとりの女性の行動によって少しだけ「癒し」を与えてるように見えたからだ。
それは、絶対に治る事のない病気や怪我に対して、それでも少しだけ痛みを和らげてくれる医者そのものにも見えてくる。
真摯的に人間を見つめている監督たちの、暖かい眼差しが見えた作品だった。
静かなラストシーン。
静かに、ただ静かに手を差し伸べる。
その人の苦しみを、
彼女はまた、追うのだろう。