B5版

午後8時の訪問者のB5版のレビュー・感想・評価

午後8時の訪問者(2016年製作の映画)
3.0
午後8時過ぎ、仕事場のブザーが鳴った。
診療時間を既に終えた医者はその訪問者に応えなかった。
ただそれだけの巡り合わせが生んだ、一つの結果。
忽ちぼやけてしまうはずの日常の些細なやりとりを、これから永く彼女は忘れられないのであろう。
ブザーが音を鳴らすたび。
自分の「しなかった行動」の責任をつけようとする、主人公の誠実さを気の毒に思った。

抑揚を抑えた、限りなく平坦な起承転結の物語だが、人1人の日常とは充分ドラマに、なり得る、あるいは陥ってしまう。というのが監督の人生観なんだろう。

人が一人、この世からいなくなった。
見知らぬ他人の死は、誰かにとっての人生における決定的な喪失なのだ。
分かっているようでいないことの筆頭だなと幸福な頭で考えている。
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