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愛を綴る女のemilyのレビュー・感想・評価

愛を綴る女(2016年製作の映画)
3.8
愛を探し求めながら、両親の決めたスペイン人の職人ジョゼと不本意な結婚生活を送るガブリエル。ある日持病の腎臓結石の治療のため療養所に送られる。そこでインドシナ戦争で負傷した帰還兵アンドレと運命的な出会いを果たし、献身的にお世話し、二人は激しく恋に落ちたにみえたが・・・

 時代設定は1950年代。南フランスの壮大な田舎を背景にガブリエルの激しい”愛”が交差する。ガブリエルを演じるマリオン・コティヤールの表情の変化や目の輝き、走る姿、歩く姿の全てが美しい。子供のいる今から過去への回想で、しっかり少女の表情を見せ、挑発的な態度、行き場のない性欲と持て余す愛を見事に表現している。
 アンドレを演じるのはルイ・ガレル。陰影の中でしっかり弱り切ったか細さを感じさせ、ガブリエルとの官能的なシーンには絶妙な光加減で、息遣いまで伝わってきそうな美しさである。

 ガブリエルは愛する人、愛せる人を常に探し求め、今ここにある物に息苦しさを感じている。アンドレと結ばれるため夫は簡単に切り捨てようとする。しかしそこに浮かび上がる真実が見えた時、感情移入の対象は一気に変わり、夫の人間性とその深い愛に胸が詰まる。愛は求めても求めてもそれが満たされる事はない。本当に大切な物はいつだってそこにある。それに気が付けばよいだけなのだ。平坦な毎日はつまらなく刺激を求めてしまうが、普通に過ごせる日々にはそこに犠牲になっている人と、自分を思ってくれてる人がいる事に改めて気づかされる。
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