キャサリン子

わたしは、ダニエル・ブレイクのキャサリン子のレビュー・感想・評価

4.0
心臓病を患い働けなくなった初老の男性が、社会保障を得るために行政手続きと格闘するお話。
杓子定規な国の対応を揶揄し、そのせいで実直な人間が苦労していることを浮き彫りにした映画です。
テーマは、「人間の尊厳」。


イギリスは階級社会と言われているが社会制度も整っている。
けれどその社会制度の脆さを、如実にあぶり出した作品。
本作は数年後の日本の実態を映し出しているかのようで、恐ろしくなりました。
今のコロナ禍で問題になっていることがまさにこの映画に凝縮されています。

ここ数ヶ月で女性の自殺者が急増しているとの記事を読みました。
新型コロナによって観光業や接客業、飲食業といったサービス業に従事する女性たちが甚大な影響を被っており、この映画に出てきたシングルマザーと同じような状況の方が増えているとのこと。
子ども達を食べさせていくために自分は「ママはさっき食べたから大丈夫」と言って食事を我慢し、ついに空腹を抑え切れず衝動的にしてしまった“ある行動”に、「惨めだわ…恥ずかしい」と言って泣いてしまうシーンは、胸が痛みました。
ダニエルの、「恥ずかしくなんかない。君は一生懸命やってるじゃないか」の台詞にどれだけ救われたことでしょう。


救いの無い状況の中でも愛があり、ダニエルは「不運」ではあったけど決して「不幸」では無かったと思いました。
キャサリン子

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