rosechocolat

わたしは、ダニエル・ブレイクのrosechocolatのレビュー・感想・評価

4.0
社会派のケン・ローチらしい作品だったなあ……。

貧困は今に生きる人々のすぐ隣にある、
いつでも貧困に陥ることがある、
一旦貧困になったら這い上がることは容易ではない。
日本もイギリスもこれは全く同じ。

近頃街中で見かけるんです。普通の、なんてことないスーパーに、普通に買い物に来ている老人が、異常な悪臭を放っている。ホームレスではないのに臭い。そして特売品をほんの少しだけしか買わない。ギリギリの生活ラインの暮らしがそこには伺える。風呂にも滅多に入らず節約しているのか、それとも風呂に入ることすら忘れるほどになってしまったのかわからないが。

身体を悪くしてしまった、ITスキルがない、そんなこと1つ取っても何もついていけなくなってしまう社会の冷たさ。日本でもそうですね。役人の杓子定規な対応も、何時間も待たせる電話も、弱みに付け込んだ貧困ビジネスも。社会的弱者に対して冷たすぎるのはどの国も一緒。

ダニエルはそんな社会に断固として妥協しない。どんなに苦しくても尊厳は忘れたくない。そんな彼の叫びに賛同する人たちの輪が広がったとき、社会は変わるだろうか。給付番号でもエラー音でもない。プライドを持って生きる1人の人間として生活することが、段々困難になっていく社会を端的に表現している。
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