yumeayu

わたしは、ダニエル・ブレイクのyumeayuのレビュー・感想・評価

4.0
人にやさしく

杓子定規な役所の対応、延々につながらないコールセンター、不親切なオンライン申込…。
「あ~こういうのムカつくわ」と思いながら見てましたが、このイライラは万国共通なんですね。

しかし、かく言う私もなかなか融通の利かない仕事をしておりまして、知らず知らずのうちに誰かをイラつかせたり、困らせたりしているのではないかと思うと襟を正される思いでした。
それにしても余りにもドライな対応が多かったですね。事実なのか演出なのかわかりませんが、さすがに辟易してしまいます。日本ならもう少し優しい気がしますが…。

その一方で、行政側の言い分も理解できなくはない。もっといい方法はあるにせよ、面倒な手続きと長い審査が必要なのは不正受給などをする人が後を絶たないからだろう。
いずれにせよ、結局割を食うのは本当に困っている真面目な人たちだ。

主人公のダニエルも何十年も懸命に働き、納税をしてきた善良な庶民で、運悪く体を壊してしまっただけだ。
役所で知り合ったケイティも、女手ひとつで2人の子供を頑張って育てている普通の母親だ。
彼らは社会的弱者ではあるが、なんとか浮上のきっかけを掴もうと努力をしている。
そんな彼らを助けるための社会保障制度なのに正しく機能していない。それどころか余計に苦しめている。なんとも嘆かわしい現状だ。

彼らにとってその日を乗り越える食べ物やお金が必要なのは言うまでもないが、それ以上に必要としているのは同じ人間として尊重し、思いやり、手を差し伸べてやることだろう。
小学生の道徳の授業ではないですが、“人にはやさしく、思いやりをもつこと” そんな当たり前のことが蔑ろにされているように思える。

しかし、それだけでは限界があることもこの映画は示唆している。
そんな不条理な世界で生きているという現実を突きつけられると同時に、ダニエルやケイティのようなことは誰の身にも起こる問題だということを思い知らされる。

明日は我が身かもしれない。
それでも忘れてならないのは、“人間であって犬ではない”ということだ。