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わたしは、ダニエル・ブレイクのkoyaのレビュー・感想・評価

5.0
単なる勧善懲悪の世界など現実にはない・・・
そんな厳しい現実をつきつけてみせる。
世の中にはこういう厳格な重みのある映画は必要だと思います。

階級社会であるイギリスでは、労働者階級だともう一生、労働者階級でしょう。
主人公のダニエル・ブレイクは59歳という年齢と心臓の病気・・・働けないけれど社会の制度で給付金も受けられない。
こっちでは働くな、と言われ、こっちでは就労可能な人だから給付金は出せない・・・型にはまったお役所仕事になんでもオンラインの現代。

40年間大工だったダニエル・ブレイクは、労働者階級かもしれないけれど、人間の尊厳は決して失っていない、この映画はそれだけを描いていると言ってもいいかもしれません。

ケン・ローチ監督を初めて観たのは『ケス』で、こんなに観客に媚びない映画撮るんだ、とびっくりしたのですが、その厳格さは何を描いてもその瞳の奥にあるような気がします。

綺麗ごとなんて描かない。
しかし、ケン・ローチ監督が描く人間の尊厳は美しい。
この映画は娯楽映画ではないから、退屈と感じる人がいるかもしれない。
ケン・ローチ監督は、観客や若い人、子供に媚びないからわからない映画と言われても動じない不動の人。

やはり巨匠と言われる映画監督は不動の人です。
ものすごく疲れる事だし、損な事もあるかもしれない、でも、それでも動じない姿勢は見習いたい、と思う。
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