憤りを表現して共感を得たり、この憤る状況を知らしめるに当たり、やりすぎても足りなくても伝わらない。この映画、冒頭からの問題提起に始まり、ラストのラスト締めくくりの見事さも含めてそのあたりのバランス感覚が完璧なんだ。すごいな、この監督。
ダニエル59歳は心臓を悪くして医師から仕事できませんよ。と言われる。仕方なく国の制度に頼ろうとするが、これがまたホント？ちょっと大袈裟に言ってる？ってぐらいに複雑な無間地獄みたいなシステムで、もはや意地悪じゃねーか！ってぐらいに厳しい環境。プラスしてパソコンを駆使しないとどうにもたどり着けない。元大工のダニエル59歳は奮闘しまくり。そんなときにシングルマザーと2人の子供に出会う。彼女らもまた、複雑なシステムの渦に巻き込まれていた。
淡々と描かれて行く中で訪れる、ハッとさせられるエピソードの数々。ダニエルと言う人間の魅力を描きながら、システムに抗い光を求め続けるこれまた魅力的なキャラクターたち。この登場人物を通して、大人は大人の。子供は子供の。若者は若者の。と、壁に阻まれた生活から必死に抜け出ようとする姿と、それを阻もうとする見えない敵。誰がこの状況を望んでいるのか？
尊厳を踏みつけられて失わざるを得ないってこんなに恐ろしいことなんだな。
