こもえ

わたしは、ダニエル・ブレイクのこもえのレビュー・感想・評価

4.4
心臓病を患うダニエル・ブレイクは医師から働くのはまだ無理だと言われ、休息とリハビリを勧められる。

そんな彼と支援手当の認定医とのやり取りからこの映画は始まるんだけど、全くかみ合わない会話(お役所の型にはまった受け答え)に思わず笑ってしまう。
改めて客観的に聞くとなんと滑稽な…(笑) でもそこからのダニエルの人生は笑ってはいられない。

ダニエルの隣に住む若者が言う。「役所は何もしてくれない。俺たちを惨めな気持ちにさせてくれるだけだ」と。

ダニエルが偶然出会って助けたシングルマザーのケイティもまた同じように規則違反だからと支援の受付さえしてもらえない。

それでも生きていかなければならないわけで、ダニエルはケイティ親子を、そしてケイティもダニエルを気にかけ、時には距離を置くこともありながらもなんとか暮らしを立てていく姿が描かれる。

作品としての派手さはないけど、静かな中にもしっかりとしたメッセージが込められていてじわ〜っと染みてくる。

タイトルの「わたしは、ダニエル・ブレイク」の意味は深く、個人の尊厳を守り抜いたダニエルは理不尽なことにきちんと怒り、困っている人に寄り添える優しい心の持ち主だった。
そんな彼の人生が報われる世の中でなければならないと思う。

観終わったあと余韻にひたりながら、いろんな場面を思い出している。
特に、ケイティが空腹に耐えきれず缶詰を食べてしまうシーンを思い出すと本当に胸が痛い。
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